フェニルアラニンが関与している可能性
Nature Chemical Biology
2012年6月18日
フェニルアラニンというアミノ酸の蓄積を特徴とする代謝疾患「フェニルケトン尿症(PKU)」には、有害な原線維の形成をはじめとするアミロイド疾患の特徴が認められる、という論文が、今週のNature Chemical Biology(オンライン版)で発表される。
PKUでは、フェニルアラニンの蓄積が神経毒性を発揮すると考えられてきたが、毒性のメカニズムは明らかにされていなかった。この毒性のため、PKU患者はフェニルアラニン摂取の周到な管理を余儀なくされている。アルツハイマー病(AD)など、タンパク質原線維の凝集体の形成を特徴とするアミロイド疾患では、フェニルアラニンのような芳香族アミノ酸がアミロイド集合過程の加速に重要であることが知られている。特に、アミロイドβタンパク質中で隣接する2残基のフェニルアラニンは、ADで認められる原線維凝集体の集合に必要なポリペプチド鎖どうしの分子間相互作用を媒介すると考えられている。
今回Ehud Gazitたちは、フェニルアラニン単独で有害な原線維が形成されることを示し、その2種類の疾患の直接的な結びつきを明らかにした。PKUで存在する濃度のフェニルアラニンは、自己集合してアミロイド様の原線維を形成する。PKUのマウスモデルは、フェニルアラニンの原線維に対する抗体を発現したが、それは非PKUマウスには認められなかったため、PKUで生じたものと考えられた。PKUマウスの脳には、アミロイド疾患の特徴であるプラークが存在した。今回の結果は、PKUに関する分子レベルの理解を大幅に進展させるとともに、典型的なアミロイド疾患を狙った治療法がPKUにも有効である可能性を示唆している。
doi:10.1038/nchembio.1002
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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