脊髄性筋萎縮症に新たな希望
Nature Biotechnology
2010年3月1日
脊髄性筋萎縮症の新しい治療の試みが、マウスモデルで実施された。ヒトの幼児でもこの方法が使えるかどうかは、今後の研究で検証する必要があるが、専門家によれば期待がもてるという。
脊髄性筋萎縮症は幼児に見られる遺伝性疾患で、神経細胞での「運動ニューロン生存」タンパク質の機能低下が原因となって、進行性の筋力低下が起こり、早期に死亡する。
Brian Kasparたちはこれまでに、ある遺伝子をもつ特殊な遺伝子操作ウイルスを血液中に注射するだけで、マウス新生仔の脊髄運動神経細胞にその遺伝子を導入できることを明らかにしている。今回Kasparたちは、脊髄性筋萎縮症の研究者であるArthurBurghesと協同して、脊髄性筋萎縮症のモデルとして使われる系統のマウスに、この遺伝子操作ウイルスを使って運動ニューロン生存遺伝子を導入した。治療をしないと、この系統のマウスは約15日以内に死ぬ。これまでの実験的な治療法でも、生存期間は約45日に延びるだけだった。これに対して、今回報告された新しい遺伝子治療では、マウスは250日以上生存し、筋肉の機能も大幅に改善した。
この方法がヒトの幼児にも適用できるかを調べる第一段階として、Kasparたちは、追跡しやすい蛍光「レポーター」遺伝子をもつ遺伝子操作ウイルスを、カニクイザル新生仔に注射した。すると、この蛍光遺伝子が脊髄運動神経細胞へと確かに送り込まれることがわかった。これから考えると、この治療はヒト以外の霊長類でもうまく働き、おそらくはヒトでも効果を示すだろう。
doi:10.1038/nbt.1610
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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