【生態】海洋保護区設定がもたらす利益
Nature Communications
2013年8月21日
海洋保護区(MPA)の設定は、魚類資源の急増をもたらす一方で、漁業者には不利益を与えないとする研究結果が明らかになった。この研究は、海洋保護区を漁業管理の1つの実行可能な選択肢として認める方向に進めるうえで役立つ可能性がある。
海洋保護区とは、自然環境とそこに生息する生物の生態系を保全し、あるいは、回復させるため、人間活動に対する制限を定めた水域をいう。ただし、海洋保護区が漁業の動態に与える影響については、研究論文が少なく、漁業者に利益をもたらすという見解には疑問がもたれていた。海洋保護区を漁業管理の手段として用いることに経済的観点から反対する意見は、海洋保護区の設定直後に漁獲量が減り、これまでより漁船の移動距離が長くなり、それが永続する可能性があるというものだった。
今回、Svan Kerwath、Colin Attwoodたちは、15年分の国内データを用いて、南アフリカのケープタウン東方沖のゴウカンマ海洋保護区の設定が、隣接水域でのChrysoblephus laticeps(この水域を原産とするタイの一種)の漁獲高に良い影響を与えたことを明らかにした。この水域での総漁獲量は、1985年から減少したが、海洋保護区が設定された翌年の1991年になると増加し始めた。一方、海洋保護区の設定による総漁獲量の減少や漁船や漁業者の移動距離の延長といった影響を示す証拠はなかった。
今回の南アフリカの漁業関連データの解析では、ゴウカンマ海洋保護区の設定が、漁業管理と環境保全上の目的達成に成功したことが示唆されている。Kerwath、Attwoodたちの研究チームは、海洋保護区の設定があっても、その付近での漁業は保護区設定後に急速に回復し、漁業者に対する負の影響は生じない可能性があると結論付けている。
doi:10.1038/ncomms3347
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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