Research Press Release
【遺伝】極限環境を生き抜く南極のユスリカの遺伝子
Nature Communications
2014年8月13日
南極で唯一の昆虫在来種で、ユスリカの一種であるBelgica antarcticaのゲノムについて報告する論文が、今週掲載される。この研究では、B. antarcticaの極限の自然環境への適応に関連する遺伝子と生物学的過程が明確に示された。
B. antarcticaは、南極半島の岩石露頭に生息し、凍結、乾燥、高濃度の塩分、強風、強烈な紫外線曝露を生き延びるため、極限環境微生物と呼ばれている。
今回、Joanna Kelleyたちは、B. antarcticaのゲノムを組み立てて、こうした極限的な環境条件に対処できるように進化した過程に関する手掛かりを得た。B. antarcticaのゲノムは、カやハエなど他の昆虫の場合と比べて、遺伝子の反復配列の数が少なく、イントロン(ゲノムのコード領域を分断するDNA配列)が短いため、これまでに組み立てられた昆虫のゲノムの中で最も小さいことが明らかになった。
また、Kelleyたちは、発生、代謝と刺激に対する応答に関連する遺伝子の数が多いことも報告し、B. antarcticaの遺伝子は、強い自然選択圧を受けて、長年をかけて進化したという考え方を示している。今回の研究は、ゲノムが極限環境に応答して進化した過程の貴重なモデルをもたらしている。
doi:10.1038/ncomms5611
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
人工知能:AIが生成した詩は人間が書いた詩よりも好まれるScientific Reports
-
古生物学:鳥類の脳の進化Nature
-
物理学:スマートフォンによる電離層の変化のマッピングNature
-
進化:ホミニンの歯から初期のヒトの成長が長期にわたっていたことが明らかにNature
-
遺伝学:大きさを犠牲にすることなく、より甘みを増したトマトの開発Nature
-
地球科学:2022年のマウナロア火山の噴火を調査するNature Communications