極端なラニーニャ現象が増えるという予測
Nature Climate Change
2015年1月27日
太平洋の両岸に影響を及ぼす極端なラニーニャ現象の発生頻度がこれまでの約2倍になるという予測についての報告が、今週のオンライン版に掲載される。ラニーニャに伴う大気循環は、世界の多くの地域で極端な気象を引き起こしている。例えば、米国南西部での干ばつ、西太平洋諸国での洪水、太平洋西部のサイクロンと大西洋のハリケーンの上陸頻度の上昇などである。
エルニーニョ現象とラニーニャ現象は、エルニーニョ/南方振動という自然の気候現象の正反対の位相だ。極端なラニーニャ現象は、太平洋中部の海面水温が低下し、それと対照的に東南アジアの沿海部の陸地が温暖化して、強い温度勾配が形成された時に発生する。
この論文で、Wenju Caiたちは、海域と比べて陸域での温度上昇が急激に進み、極端なエルニーニョ現象の頻度が上昇すると、極端なラニーニャ現象の発生頻度が23年に一度から13年に一度に上昇するという結論を示している。今回の研究で、Caiたちは、極端なラニーニャ現象のシミュレーションができることで選ばれた一連の全球気候モデルを使って、極端なラニーニャ現象の発生頻度が地球温暖化とともにどのように変化するのかを調べた。その結果、極端なラニーニャ現象の発生頻度が上昇し、この上昇分の約75%が極端なエルニーニョ現象の直後に起こることがわかった。このことは、極端な降雨と乾燥が交互に起こる気象パターンへの移行を意味している。
このテーマに関連したAntonietta CapotondiのNews and Views記事では、「世界の気候と経済に対する破壊的な影響に関連する現象が、その発生頻度を高めているだけでなく、逆向きのもう1つの破壊的な影響の直後に起こる可能性が生じている」ことが指摘されている。Capotondiは、「我々が地球温暖化の影響に立ち向かう準備をする中で、破壊的な影響を及ぼすラニーニャ現象の発生頻度が高まる可能性を真剣に検討しなければならない」と結論づけている。
doi:10.1038/nclimate2509
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
注目のハイライト
-
進化:ほかのチンパンジーよりもナッツ割りが得意なチンパンジーがいるNature Human Behaviour
-
考古学:植民地化以前のアマゾンの住民は「田園都市」でアヒルに餌を与え、トウモロコシを食べていたNature Human Behaviour
-
化学:アルゴリズムは、ウイスキーの最も強い香りと原産地を嗅ぎ分けることができるCommunications Chemistry
-
天文学:月の年齢はより古いNature
-
気候変動:南極の海氷減少が嵐の発生を促すNature
-
天文学:天の川銀河の超大質量ブラックホールの近くに連星系を発見Nature Communications