Highlight

免疫細胞の情報伝達を調べる

Nature Reviews Immunology

2005年10月1日

Toll様受容体など、微生物が生産する物質に応じて抗原提示細胞(APC)を活性化して免疫応答を開始させる自然免疫にかかわる受容体については、最近多くのことがわかってきた。こうした系では、個々のAPCは微生物由来のリガンドか、近傍の活性化された細胞が放出する可溶性の炎症性メディエーターと直接接触する必要があるらしい。だが、APCが直接的な連絡に物理的連結を利用しており、大きな細胞ネットワークの全体にわたって応答を増幅しているとしたらどうだろうか。

S WatkinsとR Salterは、骨髄性細胞の間では機能的に重要なシグナルが、以前に見つかったトンネルナノチューブ(tunnelling nanotubule)と呼ばれている構造を介して伝達されることがあるのを初めて明らかにした。この構造は膜でできた突起で、遠く離れた細胞の細胞膜同士を連結している。

スライドグラス上で培養している樹状細胞(DC)の支持体に培養大腸菌の無細胞系上清を注入すると、DC内でカルシウム濃度の変化が生じる。しかし、全てのDCがこういう応答をするわけではなく、カルシウム濃度変化という現象が細菌上清の注入された場所から均一に広がっていくことはなかった。これは、DCが可溶性のメディエーターの拡散によって刺激を受けるとした場合に予想される結果とは大いに異なっている。また、DCあるいは単球にマイクロピペットの先で機械的接触を与えた場合、上清を注入しなくてもカルシウム濃度変化が引き起こされ、これもスライドグラス上にある他の細胞に迅速に広がったが、広がり方は選択的で、全ての細胞が応答するわけではなかった。DCと単球の混合培養系では、大腸菌上清に対して起こるDCのカルシウム濃度変化は単球にも広がり、単球が直接大腸菌上清に応答できなくてもこういう伝達が起こった。こうした観察結果はいずれも、細胞間には可溶性のメディエーターの拡散によらない、物理的なつながりがあることを示している。

カルシウム濃度変化の伝播は、細胞間にあるギャップ結合の特異的阻害剤でも遮断できなかったし、離れたところにある細胞間でも起こったので、これはギャップ結合を介していないことがわかった。著者らは、細胞間に極めて微細な管状結合があり、その長さは最長で100μmにもなることを観察しているが、これはトンネルナノチューブについての以前の報告と一致している。カルシウム濃度変化は、機械的刺激を受けたDC細胞からトンネルナノチューブでつながっているDC細胞に伝達されることが観察され、伝達先の細胞ではカルシウムの濃度変化によって細胞のspreadingが起こった。これはDCが細菌産物による刺激に対して見せる典型的な機能応答である。スライドグラス表面一帯をマイクロピペットの先端でひっかいて細胞間をつなぐトンネルナノチューブを壊してしまうと、カルシウム濃度変化は刺激をうけた細胞の近くの細胞にしか伝達されず、物理的に離れていれば伝達は起こらなかった。

著者らはトンネルナノチューブのこうした働きをin vivoではまだ観察していないことをはっきりさせた上で、DCのような微生物の侵入の「見張り番」として働く細胞では、拡散という比較的遅い方法によらないで応答を迅速に増幅するのに、こうした構造が重要なのではないかと述べている。

doi:10.1038/fake625

「レビューハイライト」記事一覧へ戻る

プライバシーマーク制度