LC/MSを利用したグライコプロテオミクス解析法、レクチン-IGOT-LC/MS法による、糖転移酵素アイソザイム標的タンパク質の大規模同定
Large-scale identification of target proteins of a glycosyltransferase isozyme by Lectin-IGOT-LC/MS, an LC/MS-based glycoproteomic approach
2012年9月21日 Scientific Reports 2 : 680 doi: 10.1038/srep00680
糖転移酵素遺伝子に欠失や突然変異を生じたモデル生物は、多様な生理機能の異常を呈す。このことから、ある特定のタンパク質に付加される特定の糖鎖モチーフが生体内において重要な役割を果たしていると示唆される。糖転移酵素の標的タンパク質を各アイソザイムごとに同定することは、生体内における糖鎖の役割を理解するうえで重要な鍵となる。本論文では、糖転移酵素の1つであるβ1,4-ガラクトース転移酵素I (β4GalT-I)のアイソザイム特異的な標的タンパク質をプロテオームスケールで同定した。β4GalT-Iは最も解析が進んだ糖転移酵素ではあるが、同じ糖転移活性を有する複数のβ4GalTアイソザイムが関与するβ1,4-ガラクトース付加反応においてこのアイソザイムがどのような役割を果たしているか、これまでのところほとんど報告がない。今回、レクチン捕集したN-結合型糖ペプチドを糖鎖付加位置特異的な安定同位体標識法(IGOT:isotope-coded glycosylation site-specific tagging)により標識し、LC/MSショットガン法を利用したβ4GalT-I遺伝子ノックアウトマウスと野生型マウスの比較グライコプロテオーム解析を行うことにより、β4GalT-I特異的な標的タンパク質の大規模同定を行った。アイソザイム特異的な標的タンパク質をプロテオームスケールで同定する今回の解析手法によって、このような標的タンパク質の分子性状に共通した特徴および傾向が明らかになる。このことにより、特定のタンパク質に対し、特定の糖鎖モチーフが選択的に付加されるメカニズムの解明が進むと期待される。
- 独立行政法人 産業技術総合研究所 糖鎖医工学研究センター
- 金沢大学 学際科学実験センター 遺伝子改変動物分野