マクロファージの炎症反応を介したヘリコバクター・シネディ(Helicobacter cinaedi)感染による動脈硬化の促進
Promotion of atherosclerosis by Helicobacter cinaedi infection that involves macrophage-driven proinflammatory responses
2014年4月15日 Scientific Reports 4 : 4680 doi: 10.1038/srep04680
ヘリコバクター・シネディ(Helicobacter cinaedi;シネディ菌)は、ヒトに菌血症を引き起こす最も一般的な腸肝在位ヘリコバクター菌種であるが、その病原性は明らかになっていない。本論文では、シネディ菌がアテローム性動脈硬化に関連する可能性をin vivoおよびin vitroにおいて調査した。シネディ菌感染は高脂血症マウスにおいてアテローム性動脈硬化を有意に増強することが分かった。感染マウスの大動脈根病変部では、好中球およびF4/80+泡沫細胞の蓄積増加が示された。これは、少なくとも部分的には、シネディ菌による炎症促進遺伝子の発現上昇によるものであった。マウスにシネディ菌を感染させても外見的には強い感染症の症候は見られなかったが、シネディ菌の細胞致死性膨張性毒素RNAの検出から、大動脈へ感染していることが示された。シネディ菌感染は、培養マクロファージにおいてコレステロールの受容体やトランスポーターの発現を変化させ、泡沫細胞化を引き起こした。また、シネディ菌感染はTHP-1単球の分化を誘導した。これらのデータは、実験モデルにおいてシネディ菌がアテローム性動脈硬化に病原性の役割を果たすことを示した最初の証拠であり、それ故、腸肝在位ヘリコバクター菌種がアテローム性動脈硬化および心血管疾患に果たす役割の可能性をさらに調査する根拠となる。
Shahzada Khan1, H. N. Ashiqur Rahman2, 岡本 竜哉2, 松永 哲郎3, 藤原 章雄4, 澤 智裕3, 吉武 淳5, 小野勝彦6, Khandaker Ahtesham Ahmed2, Md Mizanur Rahaman2, 小山 耕太2, 竹屋 元裕4, 井田 智章3, 河村 好章7, 藤井 重元2 & 赤池 孝章3
- カリフォルニア大学 サンフランシスコ校 グラッドストーン研究所(米)
- 熊本大学大学院生命科学研究部 微生物学分野
- 東北大学大学院 医学系研究科 環境保健医学分野
- 熊本大学大学院生命科学研究部 細胞病理学分野
- 国立長寿医療研究センター 認知症先進医療開発センター
- ソノマ州立大学(米)
- 愛知学院大学 薬学部 微生物学講座