Author Interview

軽量化トレーサビリティシステム: 持続可能な食料供給ネットワーク

林 凱元

2020年11月号掲載

掲載論文について、投稿ジャーナル選定、論文掲載後の反響、自身の研究をどのようにアウトリーチしていくか等お聞きしました。

Mobile-based traceability system for sustainable food supply networks

―― あなたの専門分野の研究背景を簡単に説明してください。

林氏: 私の研究テーマは、分散化、トレーサビリティー、UXデザイン、持続可能性です。私は研究者兼デザイナーとして、フードネットワークにおける需要と供給のアプローチに焦点を当てた研究を行っています。目標は、従来のシステムや市場を再設計し、改革することです。最終的には、フードシステムを民主化し、食と複雑系の研究の進展に貢献したいと考えています。私は、農業とは安定で洗練されたプロセスであり、実践的な応用により世界を結びつけるものでなければならないと考えています。

―― 本論文の研究はどのようにして行われたのですか?

林氏: 私は、真の問題点を理解し、根本的な解決策を探るために、長い間、現場での参与観察を行い、多くのインタビューを行ってきました。数え切れないほどの試行錯誤を経て、この課題に取り組むためのシステム設計と機能を構築しました。その実装には専門的なエンジニアリングチームが必要となることから、しかるべき人々の協力を得て、最終的に研究を完成させることができました。

―― どのジャーナルで出版するかは、どのようにして決定されたのですか?

林氏: 私は、以前の指導教官から、研究のための研究をしてはいけないと言い聞かされてきました。研究は、自分の情熱と関心に基づいて行うべきです。量産された数百編の論文よりも、たった1編の質の高いユニークな論文の方が良いのです。

研究者の中には、論文を出版したいジャーナルを決めてから、そのジャーナルに掲載されている論文の傾向を分析し、それに合わせた研究をして論文を投稿するという人もいます。けれども私の場合、話はもっと単純です。指導教官と約束したとおり、私は自分の情熱と関心に基づいて研究をしているからです。そうすることで自然に研究コミュニティーや産業界での注目度が高まるのだと思っています。ネイチャー・リサーチは、学際的で国際的な一流のジャーナルを発行しています。私の研究テーマは食品に関するものなので、Nature Food が選択肢になりました。

―― Nature Food で論文を出版し、いかがでしたか?

林氏: Nature Food のチームには本当に感謝しています。Corresponding authorになるのは初めてだったのですが、編集長のAnne Mullen博士とJuliana Gil博士の迅速な返信と親切なサポートには本当に助けられました。また、Nature の編集部の厳格な編集プロセスには本当に感銘を受けました。彼らと一緒に作業ができたことを光栄に思います。

―― 本論文を出版して最も喜びを感じたことはなんですか?

林氏: 嬉しかったのは、世界各地から研究に関する問い合わせを受けたことです。「誰かが私の論文を読んでくれている! 私は世界に貢献している!」と思いました。

―― 研究者の方々に向けて、自分の研究を最大限に普及させるためのアドバイスをお願いします。

林氏: 非常に良い質問です。Nature に論文を発表できても、自分で宣伝しなければ、すぐに忘れ去られてしまいます。今日、私たちはあまりにも多くの情報に囲まれていて、その中から価値ある情報を見きわめるのは非常に困難です。だからこそメディアの力が本当に重要になるのですが、私は最近、メディアや、過度に省略された文脈に頼ることなく、コンテンツを全部読んで理解した上で判断しなければならないと考えるようになりました。

現段階では、この質問に対する私の答えは、「適切なターゲット、例えば関連のある研究チームや業界に論文を送ること」になるでしょう。

もしかすると、この質問自体が良い研究課題になるかもしれません。

Nature Food 掲載論文

Perspective: 軽量化トレーサビリティシステム: 持続可能な食料供給ネットワーク

Nature Food 1, 673–679 (2020) doi:10.1038/s43016-020-00163-y | Published: 02 November 2020


*東京大学大学院農芸生命科学研究科・農学部 研究成果「軽量化トレーサビリティシステム:持続可能な食料供給ネットワーク

Author Profile

林 凱元(Kaiyuan Lin)

東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程在籍(2018年~)
フランス国立科学研究センター複雑系研究所 副研究員(2019年~)

経歴:
台湾国立交通大学コミュニケーションテクノロジー学部卒業(2015年)
慶應義塾大学メディアデザイン研究科修士課程修了(2018年)

モットー:
見真自然、常若淡青

林 凱元氏

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