Nature ハイライト
構造生物学:αシヌクレインを間近に見る
Nature 585, 7825
ヒトのタンパク質であるαシヌクレインは、神経変性疾患の悪名高いグループの1つであるシヌクレイノパチーと関連付けられており、このグループには多系統萎縮症(MSA)やパーキンソン病、認知症を伴うパーキンソン病、レビー小体型認知症(DLB)などが含まれる。M Goedert、M SchweighauserとY Shiたちは今回、ヒト脳から精製されたαシヌクレインの詳細な構造を初めて報告している。クライオ電子顕微鏡法によって、MSA患者の脳で見られるαシヌクレイン凝集体は2種類の繊維から形成されていて、これらの繊維はおのおのが2つの異なるプロトフィラメントからなることが明らかにされた。また、繊維中には非タンパク質性分子が存在することも示され、これはタウオパチーで得られている知見を連想させる。著者たちはまた、MSA患者に由来するαシヌクレイン繊維がDLB患者由来のものとは異なっていることを明らかにしており、この結果は、多様なタウオパチーの場合と同じく、多様なシヌクレイノパチーは、それぞれ異なる配座異性体、つまり異なるストレイン(strain)が原因であることを示唆している。また、in vitroで得られた細繊維の構造は、患者の脳から抽出された細繊維を再現していないという重要な結果も得られた。今回得られたこれらの知見は、脳内のαシヌクレイン凝集体を可視化するためのトレーサーの開発や、繊維形成を予防、阻害し、さらには形成された繊維を解消させるような分子の探索を助けると考えられる。
2020年9月17日号の Nature ハイライト
天文学:白色矮星をトランジットする巨大惑星
光物理学:世界最小の超音波検出器
ナノスケール材料:昆虫の眼から着想を得た機能性ナノ被覆層
発生生物学:胚発生過程での中間径フィラメントの新たな役割
ヘルスケア:中国のCOVID-19封じ込めのモデル化
代謝:OPN5を介したマウスの光応答性中枢神経軸
発生生物学:内皮細胞の可塑性を操作する
腫瘍生物学:皮膚がん構造の機械的調節
がん:がんにおけるゲノム不安定性の機構的脆弱性
構造生物学:αシヌクレインを間近に見る