Nature ハイライト
Cover Story:ソーシャルキャピタルの利益:社会的に結び付いたコミュニティーが貧困を抜け出す道を与える仕組み
Nature 608, 7921
個々人のソーシャルネットワークとソーシャルコミュニティー、つまり「社会関係資本(ソーシャルキャピタル)」は、収入から健康までさまざまな結果に影響を及ぼすと考えられている。しかし、ソーシャルキャピタルの測定は難しい。今回2報の論文でR Chettyたちは、フェイスブック(Facebook)から得られた210億件の友人関係のデータを用いて、米国におけるZIPコード、高校、大学ごとの社会関係資本の測定結果を含むソーシャルキャピタルアトラスを構築している。著者たちは、異なるタイプの人々の間のつながり、社会的一体性、市民的関与という、3種類のソーシャルキャピタルを測定している。その結果、社会経済的地位が低い人々と高い人々の交流が多いコミュニティーで育った子供ほど、貧困から抜け出る可能性が大幅に高くなることが見いだされた。さらに著者たちは、階級の境界をまたぐ社会的交流を制限している可能性があるのは何か調べ、接触機会の少なさ(例えば、異なる社会経済的グループの子供は異なる学校に通うため)と、友達承認バイアス(自分に似た人と仲良くなりやすい傾向)の寄与はほぼ同じであることを見いだしている。
2022年8月4日号の Nature ハイライト
計量学:電流ではなく磁場のトンネリングで生じるジョセフソン効果
電子デバイス:ナノスケールの青色発光ダイオードの実現
材料科学:強度と延性を兼ね備えた高エントロピー合金
工学:濾過用のセルフクリーニング膜
化学:最小限の保護基を用いた糖の選択的結合
気候科学:未曾有の洪水や干ばつはリスク管理を困難にする
昆虫学:雌の性行動を制御する雄の性ホルモン
生物工学:連続的に起こるゲノム編集によって細胞事象を順番に記録するDNA記憶デバイス
社会科学:女性科学者は男性科学者よりも著者として記されにくい
神経科学:群れの中で付かず離れずを決める神経機構
免疫学:自然免疫を再プログラム化する真菌の分泌性毒力エフェクター
微生物学:Akkermansia muciniphilaによる免疫調節の分子機構
心血管疾患:ヒト心筋症における単一核プロファイリング
心血管疾患:先天性心疾患の統合マルチオミクス解析
生化学:PI3Kによるシグナル伝達と補酵素A合成との結び付き
がん:前立腺がんゲノムの変化を解析する
代謝:餌のロイシン含有量を見分け、ロイシンが豊富な食餌を選んで食べる仕組み
分子生物学:レトロキャスコーダーで遺伝子転写の順序を記録する