Nature ハイライト

Cover Story:脳の配線図:成体のショウジョウバエの脳の完全なニューロン接続マップ

Nature 634, 8032

ショウジョウバエの脳のコネクトーム。ニューロンはそれらを定義付ける神経伝達物質に応じて色分けされている(青色:GABA、黄色:アセチルコリン、ピンク色:グルタミン酸)。
ショウジョウバエの脳のコネクトーム。ニューロンはそれらを定義付ける神経伝達物質に応じて色分けされている(青色:GABA、黄色:アセチルコリン、ピンク色:グルタミン酸)。 | 拡大する

Amy Sterling and Julia Kuhl for FlyWire, Princeton University, (Dorkenwald et al., Nature, 2024)

脳のニューロンはシナプスを介して接続しており、社会的相互作用やナビゲーションといった複雑な行動をつかさどる高度な回路を形成している。しかし、こうした回路がどのように機能しているかを理解するためには、全てのシナプス接続の地図である「コネクトーム」が必要となる。今週号では、FlyWireコンソーシアムが一連の論文で、成体の雌のキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の脳の完全なコネクトームを発表し、その分析を行うことで、約14万個のニューロンと5000万以上のシナプス接続を明らかにしている。M MurthyとS Seungが率いるFlyWireコンソーシアムはまず、ショウジョウバエ脳の完全な配線図を、コネクトームのネットワーク分析の結果と共に提示している。また、G JefferisとD Bockたちは中央脳のニューロンの大半について、SeungとMurthyたちは視葉についてそれぞれアノテーションを行い、Murthyたちはさらに別の論文で、コネクトームの構造に関する統計分析を行っている。一方、S KimとM Wernetたちは、ハエの視覚系に着目して、ナビゲーションの基盤となっている回路に関する知見を得ている。Seungは、接続データを用いて新たな神経回路を発見するとともに、視覚機能におけるその役割を予測しており、S Bidayeたちは、停止行動の神経回路について説明している。さらにP Shiuたちは、このコネクトームを全体として計算モデルに変換し、ハエの脳の「デジタルツイン」様のものを作製している。J Pillowたちはコネクトームのサブ回路を調べ、データから「エフェクトーム」を見つけるための道筋を定義している。

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