Nature ハイライト
Cover Story:焼き尽くされた大地?:巨大山火事がオーストラリアの生物多様性に及ぼした影響
Nature 635, 8040
表紙は、2020年2月にオーストラリアのコンラン岬で起きた山火事の焼け跡で、わずかな食料を手にするオグロワラビー(Wallabia bicolor)である。2019年から2020年にかけて、世界的にも前例のない巨大山火事がオーストラリアの森林を襲い、1000万ha以上の土地を焼き尽くした。今週号では、D Driscollたちが、この大火災がオーストラリアの生物多様性に及ぼした影響の全容を明らかにしている。彼らは、巨大山火事の全体像を構築するために、焼失地域全域から得られた動植物を含む複数のデータを分析した。そして、全体的な平均の影響だけでなく、負の影響と正の影響を別々に考慮するメタ分析の新しい手法を用いて、山火事の影響の重要な調節要因を特定した。最も影響力のある破壊要因は、過去40年間の火事の発生回数であり、火事の発生回数が多いほど、負の影響のサイズも正の影響のサイズも約2倍になることが分かった。近隣に未焼失の土地が多い場合、ひどく焼失した場所でも山火事の影響は緩和されることも見いだされた。研究チームはさらに、将来の火事の影響を緩和するのに役立つ戦略を提案しているが、極端な山火事の起こりやすい気象の増加を抑制できるのは、炭素排出量を迅速かつ大幅に削減することだけだと結論付けている。
2024年11月28日号の Nature ハイライト
量子コンピューティング:機械学習による誤り訂正符号の高精度復号化
量子物理学:グラフェン量子ドットに確認された相対論的量子スカー
量子ドット:大幅に改良されたカドミウムフリーの緑色発光ダイオード
太陽電池:タンデム太陽電池におけるパッシベーターの異性体効果
太陽電池:全ペロブスカイトタンデムにおける不均一性低減
太陽電池:高ミラー指数面配向によるペロブスカイト太陽電池の性能向上
太陽電池:ペロブスカイト太陽電池の劣化と添加剤によるその解決策
化学:モバイルロボットによる探索的合成
進化学:成長期の延長は初期のヒト属で始まった
発生生物学:ホヤにも神経堤の性質を持つ細胞が存在
がんゲノミクス:同種幹細胞移植後のクローン動態の長期解析
神経科学:バースト発火の順序が視覚情報を伝える
神経回路:固定と可変の組み合わせで決める進路
進化遺伝学:ある神経ペプチド遺伝子の発現調節が概日可塑性の進化をもたらした
発生生物学:クラインフェルター症候群の男性不妊の機構についての手掛かり
微生物学:「最後の砦」の抗生物質に意外な穴
健康科学:空間プロテオミクスによる病態解明と創薬標的の特定
腫瘍免疫学:固形腫瘍での細胞骨格因子と脂質代謝の免疫代謝軸
構造生物学:AIに基づく動力学シミュレーションシステム