Nature ハイライト 細胞:毛とテロメア 2005年8月18日 Nature 436, 7053 幹細胞の機能と細胞の無限増殖を可能にするタンパク質との関係から、組織の損傷や老化、癌などと結びついた異常の治療に新しい道が開けそうだ。S Artandiたちは、皮膚細胞でのこのタンパク質の活性化によって毛が急激に成長するようになるしくみについて報告している。 皮膚や血液のような再生する組織では細胞の速い代謝回転が必要だが、それは厳密な制御のもとで組織幹細胞が分裂することによっている。しかし、幹細胞の挙動を制御する遺伝子とタンパク質については、ほとんど解明されていない。 今回Artandiたちは成体の組織で、テロメラーゼの成分の1つでTERTとよばれるタンパク質を条件的に活性化できるトランスジェニック系を作出した。このタンパク質はヒトの癌の90%で活性化されている。ところが、皮膚でTERTを誘導すると意外なことに休止状態の毛嚢幹細胞が活性化され、毛嚢周期の活動期が開始される。TERTはこれまで、染色体の末端にキャップ様の構造をかぶせる役割が知られていたが、今回の研究はTERTのそれとは別の活性を初めて見つけたもので、治療のためにTERTを操作するという新戦略が示されている。 2005年8月18日号の Nature ハイライト 生態:3種類のホットスポットはほとんど重ならない 材料:準結晶は光を跳ね返す 細胞:毛とテロメア 宇宙:バーストをすばやく捉える 生化学:新たに発見されたヘモグロビン生成経路 : 目次へ戻る