Nature ハイライト
遺伝子工学:一塩基編集技術の進展
Nature 551, 7681
2016年、D LiuたちはDNA「一塩基編集」技術を開発した。この系により二本鎖切断を起こさずに、DNA内でC–G塩基対をT–A塩基対へ変えることができる。この方法では、シチジンデアミナーゼをRNA誘導性の不活性型Cas9複合体に連結することにより部位の選択が可能になる。しかし、この系では疾患を引き起こすことが知られている一塩基多型のおよそ半分は修正できない。今回D Liuたちは、A–T塩基対のG–C塩基対への変換を目的とした、ゲノム塩基編集技術の次の段階について報告している。彼らはRNAに作用する細菌のアデノシンデアミナーゼを元にして、7回の選択と改良を行い、ABE7.10を作り出した。この酵素も同様にRNA誘導性の不活性型Cas9複合体に連結され、DNAを基質として用いる。その結果、ゲノム中の複数の部位や状況での修正効率は平均53%で、変異が起こる確率も非常に低かった。重要なことに、この系は、疾患に関連した一塩基多型の修正にも、疾患を抑制する一塩基多型の導入にも用いることができる。
2017年11月23日号の Nature ハイライト
古生物学:耳の骨が1~2個多かった古代の滑空性哺乳類
微生物学:地球上の微生物多様性
遺伝子工学:一塩基編集技術の進展
構造生物学:80Sリボソームの修飾をマッピング
天文学:ペルセウス座銀河団に見られる太陽元素存在量
大気化学:雷雨の中で放射性同位体が生成される
有機化学:触媒が全てを担う
地球科学:深部マントルの低速度領域を鉄で解決する
がん免疫療法:量より質のネオアンチゲン
がん免疫療法:免疫療法に対する腫瘍応答を予測する