科学者たちが哺乳類の間を伝搬可能なH5N1鳥インフルエンザウイルスを作製できるようになった。これにより、偶発的であれ、生物テロ攻撃の一部であれ、もしそのようなウイルスが実験室から外に出た場合、ヒトでのパンデミックを引き起こすかもしれないという懸念が大きくなっている。研究はどの程度公開されるべきか、そしてこのような研究には十分な監視体制があるかどうかについての議論が激化しており、ここでは、今回の議論に関するすべてのNature の報道をまとめた。
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バイオセーフティーに関する国際基準に不備があり、バイオセキュリティー上の懸念から研究者のモチベーションがそがれている。現在のインフルエンザ研究には、こうした重大なリスクがある。
Nature 485, 5 (2012年5月2日号)
鳥インフルエンザH5N1ウイルス由来の赤血球凝集素(HA)タンパク質を基にした遺伝子改変インフルエンザウイルスは、わずか4つの変異によりフェレット間で伝播しうることが明らかになった。このことは、ヒトでのパンデミックが鳥から生じる可能性を強調している。
Nature (2012年5月2日オンライン掲載)
H5N1インフルエンザウイルスを哺乳類の間で感染できるよう適応させた研究に関する2本の論文に対し、米国のバイオセキュリティーに関する国家科学諮問委員会(NSABB)が、手順などいくつかの詳細な情報を差し控えて公表すべきだとする勧告を出した。
Nature 482, 156-157 (2012年1月31日号)
米国のバイオセキュリティー国家科学諮問委員会(NSABB)のメンバーたちが、H5N1インフルエンザの実験研究に関する情報交換について同委員会が出した勧告を解説する。
Nature (2012年1月31日オンライン掲載)
インフルエンザのパンデミック(世界的大流行)を防ごうとするなら、哺乳類で伝播する鳥インフルエンザウイルスの研究を継続することが必要だと、河岡義裕が論じている。
Nature (2012年1月25日オンライン掲載)
The potential for mutant-flu research to improve public health any time soon has been exaggerated. Timely production of sufficient vaccine remains the biggest challenge.
Nature (Published online 8 February 2012)
Researchers and policy-makers debate the case for redacting avian flu papers.
Nature (From the blog 13 February 2012)
US National Science Advisory Board for Biosecurity explains recommendation to publish H5N1 work in a form that withholds essential data.
Nature (Published online 31 January 2012)
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