Nature ハイライト

Cover Story:失われた世界:太古の環境DNAが明らかにした200万年前のグリーンランドの生態系の性質

Nature 612, 7939

約200万年前のグリーンランドの生態系(想像図)。
約200万年前のグリーンランドの生態系(想像図)。 | 拡大する

Beth Zaiken/bethzaiken.com

表紙は、約200万年前のグリーンランド北部の一部地域に存在した豊かな生態系の想像図である。今回E Willerslevたちは、太古のDNAからこの生態系を再構築している。彼らは、ピアリーランドのKap København累層で研究を行い、5つの異なる地質学的サイトから有機物に富む堆積物試料を集めた。こうした試料からDNAを抽出し塩基配列を決定することで、約200万年前に存在した植物相と動物相の状況の全貌を知ることができた。そして著者たちは、クロベ、トウヒ、カバノキなどの北極の植物種が混生した疎な北方林の証拠と共に、ノウサギ、マストドン、トナカイ、ガンなどの動物の痕跡を見いだした。こうした証拠から、現在は極砂漠となっているグリーンランドのこの地域が、現代より11~17°C温暖であったことが裏付けられ、もはやこの世界のどこにもない生態系が存在したことが示唆された。

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