Nature ハイライト

Cover Story:雑音をはねのける:誤りの緩和が古典的コンピューターでは手が届かない物理を調べる力を量子プロセッサーに与える

Nature 618, 7965

表紙は、誤り緩和によってピントが合っていく量子回路を表している。量子コンピューターは、特定の問題を古典的コンピューターよりかなり速く解ける見込みがある。しかし、環境雑音によって量子コンピューターに誤りが生じることは避けられず、そうした誤りを、誤りが蓄積するより速く訂正することは、既存の量子コンピューターの能力を超えている。それにもかかわらず、今回A Kandalaたちは、誤りを訂正するのではなく緩和することによってでも、量子コンピューターが古典的コンピューターを凌駕できることを示している。彼らは、IBMの、チップ上の127キュービットからなる雑音を伴う量子プロセッサーを用いて、大きなエンタングル状態を生成し、モデル量子物質の電子スピンをシミュレートして、その磁化を予測した。さらに、古典近似では、基本的に古典的コンピューターが十分なメモリーを持たないため、こうした結果を再現できないことも示している。著者たちは、誤り緩和によって、既存の量子コンピューターや近い将来の量子コンピューターが、古典的コンピューターでは手が届かない問題を解くのに役立つほど十分に優れたものになる可能性があると示唆している。

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