Nature ハイライト
Cover Story:ラッコは大切:頂点捕食者の回復が沿岸の損傷の減速に役立つ仕組み
Nature 626, 7997
表紙は、米国のカリフォルニア沿岸に生息するラッコ(Enhydra lutris)である。この種は、頂点捕食者であるが、かつて狩猟により絶滅寸前まで追いやられた。今回B Hughsたちは、カリフォルニア州の塩性湿地におけるラッコの個体数の回復によって、この地域の塩性湿地の衰退が減速したことを示している。頂点捕食者の回復が植生生態系に連鎖的な影響をもたらすであろうとは思われていたが、この問題はまだ議論の余地がある。著者たちは、河口域であるエルクホーン湿地で数十年にわたるモニタリングを行い、湿地を傷つける穿孔性のカニをラッコが捕食するため、ラッコの個体数の増加とともに湿地周縁部の侵食が減速していることを見いだした。こうした結果は、頂点捕食者の回復が、脆弱な沿岸生態系に好ましい影響をもたらす可能性があることを示唆している。
2024年2月1日号の Nature ハイライト
量子情報:大規模量子コンピューターの実現へさらに前進
光物理学:光駆動結晶で実現されたベリー位相
工学:これまでになく高性能の半導体ファイバーの実現
ナノスケール材料:ダイヤモンドに見られるさまざまな非整合双晶境界
エネルギー科学:電極触媒による持続的なCO2変換
化学:アルケンの1位と3位の官能基化
電気化学:リチウム硫黄電池における複雑な硫黄還元反応の全体像
太陽電池:フレキシブルな高効率シリコン太陽電池
進化遺伝学:ミトコンドリアと核間の不和合性による雑種の生殖障壁
神経科学:LPHN3によるシナプス形成機構
神経科学:「痛いの痛いの飛んでいけ」の神経基盤
公衆衛生:接触追跡アプリを用いたSARS-CoV-2感染の疫学的解析
遺伝学:エンハンサーバリアントにより多指症が生じる機構
免疫学:自己反応性T細胞が関与するギラン・バレー症候群もある
細胞生物学:小胞体とミトコンドリア間の接触部位を動的に見る
微生物学:深層学習で耐性菌をたたく薬を開発
構造生物学:ヒトLINE-1のレトロトランスポジションでの標的認識機構
バイオインフォマティクス:組織特異的な合成エンハンサーの設計法
バイオインフォマティクス:深層学習を使って細胞型特異的エンハンサーを設計