Nature ハイライト

Cover Story:ダメージコントロール:トカゲの尻尾切りに着想を得た破壊箇所を分離して建築物全体の崩壊を防ぐ設計

Nature 629, 8012

フルスケールの建築物による試験の結果。今回の設計手法を用いると、崩壊は初期破壊の部分の付近のみに限定され、建築物全体の崩壊が阻止された。
フルスケールの建築物による試験の結果。今回の設計手法を用いると、崩壊は初期破壊の部分の付近のみに限定され、建築物全体の崩壊が阻止された。 | 拡大する

Jose M. Adam

表紙は、2015年に中国の貴陽で起こった9階建てビルの倒壊直後の状況である。建築物の壊滅的倒壊は、損害が非常に大きく、人命の損失をもたらす。従来の建築設計では、問題を緩和するために、建築物の全ての壊れた部分から残った構造へ荷重を再分配するように意図しているが、この方法は、そうした設計でなければ影響を受けなかったと思われる区画が崩壊する原因になり得る。今回J Adamたちは、建築物の壊れた部分を分離して壊滅的倒壊を防ぐという建築設計の代替的アプローチを提示している。このアプローチは、「階層に基づく崩壊分離」と呼ばれ、捕食者から逃れるためにトカゲが尾を切り落とす方法に着想を得たものである。この設計によって、あらかじめ決められた建築物の各部分の境界に沿った制御破壊が可能になり、初期の破壊が建築物全体に広がるのが阻止される。著者たちは、これによって建築物全体の崩壊が妨げられ、より多くの居住者の救助が可能になると示唆している。

2024年5月16日号の Nature ハイライト

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