Nature ハイライト
Cover Story:待ちわびた時:超精密な原子核時計の実用化が現実に
Nature 633, 8028
原子時計は、あるエネルギー準位から別のエネルギー準位への電子の移動を使って時間を計測するものであり、現在の計時の標準となっている。原子核のエネルギー準位間の遷移に基づく原子核時計は、さらに高い精度をもたらすと期待されているが、原子核の量子状態間の遷移を、外部レーザーを用いて正確に調べるのは難しいことが分かっている。これは、機能する原子核時計を作るために必要な重要なステップである。今回C Zhangたちは、この問題を解決し、原子核の遷移と原子時計の遷移の直接的なつながりを示し、原子核時計を作るために必要な構成要素を実証している。彼らはまず、フッ化カルシウム結晶中にトリウム229の原子核を埋め込んだ(表紙画像)。次に、現在最も精密な原子時計に周波数を合わせた特別設計のレーザーから真空紫外光を照射して、この原子核を励起した。その結果、原子核遷移の量子状態が分解され、原子核構造についての知見が得られた。原子核遷移の周波数を原子時計と直接比較することで、正確な基準点が得られ、これによって原子核時計の実用化が現実的なものとなった。
2024年9月5日号の Nature ハイライト
天体物理学:惑星形成中の円盤で生じた重力不安定性の観測
超伝導:超伝導体におけるマヨラナゼロモードの混成
ナノスケール材料:魔法角ツイスト2層グラフェンの相関ダイナミクス
ナノスケール材料:遷移金属ジカルコゲニドの化学的リチオ化の加速
化学:芳香環の等価体のエナンチオ選択的合成
環境科学:工場レベルでの削減技術の実現によるHFC-23排出低減
持続可能性:プラスチック排出のホットスポット
テクトニクス:ガッケル海嶺の地殻は予想より厚く大きく変化している
生態学:生息地が多彩な景観ほど生態系は豊かになる
古生物学:体内の構造が保存された真節足動物の幼生化石
がんゲノミクス:大腸がんゲノムの大規模な包括的解析
がんゲノミクス:大腸がんの予後シグネチャー
社会科学:大規模言語モデルはひそかに人種差別をする
免疫学:性ホルモンは免疫に影響を与える
生物工学:細胞間相互作用や疾患表現型を再現するヒトオルガノイド
腫瘍生物学:乳腺組織の発がんを防ぐ両刃の剣
がん:感覚ニューロンが乳がんの転移を促進する機構
生化学:ユビキチン化過程でUbが酵素から酵素へと受け渡される仕組み
生物物理学:リボソームによるタンパク質折りたたみの影響