Nature ハイライト
Cover Story:捕食目的の乗っ取り:ショウジョウバエの成体を宿主とする捕食寄生バチ
Nature 633, 8031
ショウジョウバエ(Drosophila)は研究に欠かせない存在で、極めて広範に調べられているモデル生物であることから、その生活環に関して新たな驚きはほとんどないと推測するのは容易だろう。ところが今回、L Mooreたちは、さまざまな種のショウジョウバエの成虫を宿主として標的とする寄生バチが存在するという意外な新事実について報告している。約200種類の寄生バチが、ショウジョウバエの幼虫や蛹のような脆弱な段階で卵を産み付けて攻撃することは知られていたが、これまで成虫を宿主とする種は確認されていなかった。著者たちは、米国ミシシッピ州で野生のショウジョウバエが線虫に感染していないかを検査していた際に、新種の寄生バチSyntretus perlmaniを偶然発見した。このハチは、ハラボソコマユバチ亜科(Euphorinae)に属することが確認された。この亜科の他の種は、甲虫、アリ、バッタなどの成虫を標的にすることが知られていたが、成虫のハエを標的とすることが確認されたのはこの種が初めてである。表紙は、S. perlmani(右)とその宿主であるショウジョウバエ(ここではDrosophila affinis)である。
2024年9月26日号の Nature ハイライト
天文学:JWSTで確認された温暖なスーパージュピター
原子物理学:ポジトロニウムの一次元レーザー冷却
電子デバイス:スピンクロスオーバー物質中の神経軸索様の信号伝達
エネルギーハーベスティング:アメリシウム–テルビウム化合物を用いたマイクロ原子力電池
材料科学:水素を用いるバルク合金のワンステップ製造
生物地球化学:海洋の中深層上部における微生物代謝の制限要因
気候科学:山火事のサイズとともに増大する地表温暖化
生物地球化学:2023年のカナダの山火事による炭素排出
ゲノミクス:パンコムギDゲノムの成り立ちを探る
神経科学:ミエリン形成がニューロン可塑性にブレーキをかける
神経科学:報酬か罰かをマップにして記憶する
植物科学:植物がストレスに応じた応答をする仕組み
微生物学:細菌で抗生物質耐性菌に対抗する
発生生物学:ウズラ初期胚発生における機械的な力のモデル化
免疫学:フィブリンはCOVID-19病態のドライバーである
がん:腎臓がんの進行を促す代謝的変化
細胞生物学:有糸分裂の際にはCDK1だけでなくCDK5もサイクリンB1と共に働く
化学生物学:タンパク質の局在性を正常化して疾患を治療する
構造生物学:XPR1のクライオ電子顕微鏡構造