Nature ハイライト
Cover Story:重複の効果:全ゲノム重複が実験室で5000世代にわたって多細胞の適応進化を駆動した
Nature 639, 8055
全ゲノム重複(WGD)は真核生物で適応進化を促進する可能性があるが、それがどのように起こり、持続して、適応に寄与するかは、よく分かっていない。今週号ではW Ratcliffたちが、多細胞の「スノーフレーク」酵母(Saccharomyces cerevisiae)において、WGDが発生し、数千世代にわたって安定に持続し得ることを明らかにしている。彼らは、サイズの増大を強制する選択条件下で、酵母が細胞内の染色体を2組から4組へと急速に進化させることを見いだした。この「四倍性」は50日以内に出現し、ゲノムの不安定が認められるにもかかわらず、少なくとも950日間(約5000世代)持続した。研究チームは、この現象が出現し維持されたのは、それが選択圧に応答して即時の進化的有利性をもたらし、より大きく長い細胞を形成して、より大規模な多細胞クラスターを生み出したためだと結論付けている。さらに、重複ゲノムの不安定性は、特定の染色体の獲得および喪失(異数性)を引き起こし、細胞のさらなる伸長を促して、600日以内に肉眼で確認できる多細胞性を生み出した。表紙は、この効果を示す進化したスノーフレーク酵母の画像で、WGDと異数性の結果生じた、より大きな核(黄色)とより大きく長い細胞(青緑色)が観察できる。
2025年3月20日号の Nature ハイライト
計算機科学:誤差逆伝播法による生成AIの最適化
電子工学:計算精度の組み合わせによるエネルギー効率の良いAIチップ
計算機科学:無機材料を生成できるAIモデル
量子ドット:均一な量子ドットによる高効率で長寿命の純青色LED
構造材料:回転可能なカイラルセルからなる高性能メタマテリアル
気候科学:前期完新世の全球海水準上昇
気候科学:地中海地域の降水量はほぼ定常的だった
気候科学:オーストリアの大雨の増加と関連した洪水の増加
社会科学:子どもの数学力は実学と座学で別のもの
進化学:哺乳類の外耳の起源は魚類の鰓にあり
神経科学:脳内計算機としての線条体
微生物学:CARDドメインが細菌の抗ファージ防御系にも存在
生物工学:ミトコンドリア塩基エディターによる疾病モデルの作製
腫瘍免疫学:IL-27は腫瘍に対するT細胞応答を高める
免疫療法:肝臓がんのサブタイプに対応付いた一連のモデル
がん:電気的な活動が悪性度を高める
細胞生物学:パーキンとOMA1はミトコンドリアの品質を二重に管理する
分子生物学:減数分裂のために、DNA二本鎖切断を制御しながら導入する仕組み
構造生物学:コレステロールとビタミンKとγ-カルボキシル化の複雑な関係