Nature ハイライト
Cover Story:海流の動向:人工衛星SWOTが前例のない精細さで捉えた海洋の渦と波
Nature 640, 8059
渦と呼ばれる円形の海流は、熱循環から栄養素の移動に至るまで、海洋の動態に大きな影響を及ぼす。メソスケール(100~300 km)の渦は比較的よく研究されているが、サブメソスケール(10~100 km)の渦を全球規模で観測・評価するのは非常に難しいことが分かっている。今週号ではM Archerたちが、人工衛星SWOT(Surface Water and Ocean Topography)による観測結果を報告し、海洋の動態を前例ないほど詳細に明らかにしている。SWOTは表紙の想像図のように、海面の特徴を二次元の帯状に捉え、1~10 kmの解像度で、サブメソスケールの渦だけでなく、海中の密度面に沿って伝播し混合において極めて重要な役割を果たす内部波の計測も可能にする。研究者たちは、これらのサブメソスケールの動きの振幅は非常に大きく、その結果、従来考えられていた以上に全球の海洋循環に大きな役割を果たしている可能性があることを示している。
2025年4月17日号の Nature ハイライト
量子光学:エンタングル光子対による新たな量子相関
超伝導:ニッケル酸化物における40 Kを上回る常圧超伝導
強化学習:環境を学習してゲームソフトを自力でやり遂げる人工知能
電子工学:二次元MoS2に基づくマイクロプロセッサー
物性物理学:準弾性中性子散乱による柔粘性氷VIIの観測
分析化学:MOF–ピラーアレーンによるアルキル鎖含有分子の構造決定
有機化学:ひずんだ分子同士の反応による有用化合物の合成
地球物理学:過去のテクトニクスによる玄武岩質の小アンティル諸島スラブ
保全生物学:景観の分断化は生物多様性を総体的に低下させる
人類学:100万年以上前の西ヨーロッパの住人の顔
微生物学:菌類細胞膜のリン脂質を標的とする新規な抗真菌化合物
免疫学:MIS-Cの発症機序
免疫学:急性および慢性感染に適応可能なCD8+ T細胞分化プロブラム
免疫学:急性感染早期にも疲弊の特徴を持つT細胞が存在する
がん:侵害受容ニューロンが腫瘍進行を促す仕組み
がんゲノミクス:腫瘍内不均一性と表現型可塑性の根底にある染色体外DNA
細胞生物学:核内搬入と核外搬出は核膜孔の同じ領域を通って行われる
分子生物学:単一細胞で複数のエピジェネティック修飾を同時に追跡
生化学:アルカロイド合成酵素の構造とスーパーオキシド機構