Nature ハイライト

Cover Story:歩法を調節する遺伝子: 単一の変異がウマの神経回路を改変し、歩法のレパートリーに「ペース」が加わることになった

Nature 488, 7413

「ペース(側対歩)」で駆けるアイスランドホース。
「ペース(側対歩)」で駆けるアイスランドホース。 | 拡大する

Credit: Freyja Imsland

ウマの一部、特に繋駕速歩競争に使われるアメリカンスタンダードブレッドや全地形対応のアイスランドホースには、一般的な歩法に加えて「特殊な」歩法を行えるものがいる。ウマはすべて、常歩(なみあし、walk)、速歩(はやあし、斜対歩を指す、trot)、駈歩(かけあし、canter)、襲歩(しゅうほ、gallop)ができ、一部の馬は、「ペース」(体の左右同じ側の肢2本を一緒に動かす速めの側対歩、pace)やほかの側対歩(アンブル、amble)もできる。アイスランドホースの全ゲノム関連解析によって、DMRT3遺伝子の中途終止コドンと、もう1つ別の歩法を行う能力との間の連関が明らかになった。マウスを使った機能研究では、Dmrt3は一部の脊髄ニューロンで発現されていて、このようなニューロン群は、四肢の動きを制御する協調した運動ネットワークの正常な発生に不可欠なことがわかった。つまりDmrt3は、脊椎動物で歩幅を制御する脊髄回路の形成に重要な役割を果たしているらしい。家畜ウマでは、この変異がウマの多様化に大きな影響を及ぼしてきた。それは、いくつかの品種の変わった歩法特性には、一見したところDMRT3の変異が必要だからである。表紙は純血種のアイスランドホースを対象とするLandsmót国際コンペティションでの競技者である。

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