Nature ハイライト

神経:ヒトは覚えなくても学べる

Nature 436, 7050

ヒトは、自分がしていることを認識すらしていなくても学習できることが、重度の記憶障害患者を対象に行った研究でわかった。サルやラットではこのような「非陳述的な」学習がみられることがわかっているが、ヒトにも同じ能力があるのか、それとも意識的に学ぶというヒトの性向は、我々が非陳述的学習の能力を失っていることを意味するのかは、よくわかっていなかった。  意識的な学習と記憶は、内側側頭葉とよばれる脳領域が担っており、この領域に損傷を受けると重い健忘症になる。しかし、L Squireたちによれば、そのような患者でも単純な識別課題の学習は可能である。ただし彼らは学んでいることを認識していないという。  Squireたちは、内側側頭葉に重い損傷を受けている2人の患者に簡単なテストを行った。任意の物体を2個ずつの組にして見せ、あらかじめ「正しい」と決めておいた物体を選んでもらうというものだ。脳に損傷のない被験者の場合、この課題を学習するのにせいぜい数日しかかからない。今回被験者となった患者たちは習得に数週間を要したが、最終的には高い正答率に達したという。だが、彼らはなぜ自分がある物体を「正しい」物体と考えたのか、その理由を思い出すことはできなかった。

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