Nature ハイライト

地球:地球内部が常に暖かい理由

Nature 436, 7050

地球深部で起きる放射性崩壊で発生するニュートリノという謎の素粒子が、国際研究チームによって検出された。今週号で報告されているように、将来このような素粒子を使って、地球内部を暖め続けている放射能がどれほどの量なのか直接測定することができるようになるかもしれない。  G Grattaと鈴木厚人の率いるこの研究チームは、神岡液体シンチレーター反ニュートリノ検出器KamLANDによるニュートリノ測定の結果を解析した。地下に設置されたこの検出器は、約千トンの液体で満たされた直径13 mの球体でできていて、ニュートリノの基本物理の疑問を解明し宇宙起源のニュートリノ発生源を観測するために設計されている。しかし今回の研究のように、地球物理学分野の問題にも応用できる。この検出器は、地球深部でウランとトリウムが放射性崩壊して発生したニュートリノ(実際には、ニュートリノの反物質パートナーである反ニュートリノ)を捉える能力を持つ最初のニュートリノ検出器である。ニュートリノは非常に軽く、他の物質とほとんど相互作用しないので、検出がむずかしい。  熱は、岩石でできた地球内部をあたかも緩慢に動く液体のように動かす。この熱は火山活動やプレートテクトニクスにエネルギーを供給し、その発生源は2つある。熱の一部は、灼熱の地球形成時の残りで、鉄を成分とするコアに特に集中している。しかし相当な部分は、地球マントルに含まれている放射性元素の崩壊に由来する。地球深部の総熱量やこの2つの熱源の寄与する割合については、両方ともほとんどわかっておらず、測定も困難である。しかし、現状のもっとも信頼できる推定では、約半分が放射性崩壊によるものとされている。  KamLANDによる測定では、この割合を独自に検証することができる。今回初めて報告された結果では、この推定はだいたい正しいようだ。放射性崩壊による発熱量を絞り込むには、記録された反ニュートリノの数は十分ではないが、測定結果は地球内部の標準モデルと一致しているように見え、総熱量に対する放射性崩壊の寄与分の上限が定められた。

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