Nature ハイライト
Cover Story:RNAポリメラーゼIIIの位置:タンパク質合成を駆動するのをRNAポリメラーゼIIIが助ける転写開始の秘密が、その構造から明らかになった
Nature 553, 7688
表紙は、RNAポリメラーゼIII(Pol III)と転写因子TFIIIBとDNAからなる複合体のトポロジーを示す、表面とリボンのハイブリッド画像である。RNA Pol IIIは、細胞増殖時のタンパク質合成に不可欠な短いRNAの転写を触媒する。Pol IIIの調節は、主に転写開始段階で行われ、Pol III活性の調節異常はがんなどの疾患につながる。今回、A VanniniたちとC Müllerたちが別々の論文で、17個のサブユニットからなる完全なPol IIIと、TFIIIBの3つのサブユニットであるTBP(ピンク色)、Brf1(黄色)、Bdp1(オレンジ色)で構成される、酵母のPol III転写開始前複合体(PIC)が、プロモーターDNAに結合しているさまざまな機能的状態のクライオ(極低温)電子顕微鏡構造について報告している(裂け目の両側のほどけたDNA鎖を安定化するループが明るい青緑色のリボンで描かれている)。この構造によって、Pol IIIが標的プロモーターへ誘導される詳しい仕組みや、プロモーターDNAが開いて安定した転写バブル構造が形成される仕組みを説明できる。さらに、こうしたPol IIIのPICの構造によって、Pol IやPol IIのPICと構造を比較できるようになった。
2018年1月18日号の Nature ハイライト
微生物学:腸の流行性感染症の出現
天文学:星形成の「鍋」をかき混ぜる
ナノスケール材料:複数の刺激に対して応答する材料
気候科学:長期的な地球温暖化の見積もりを絞り込む
地球化学:深海の酸素
植物科学:細胞表面の相互作用のネットワーク
がん:高感受性の皮膚がん
がん:REV-ERBで抑制される腫瘍
細胞生物学:ノンストップコドン
構造生物学:O抗原多糖輸送体の構造