Nature ハイライト
Cover Story:お守り毛布:乳幼児の腸マイクロバイオームと疾患リスクが出生後の早い段階で形成される仕組み
Nature 562, 7728
出生から小児期までの腸マイクロバイオームの発達は、1型糖尿病などの疾患病理に重要であると考えられているが、この時期のマイクロバイオームの発達についてはまだ分かっていないことが多い。今週号の2報の論文では、乳幼児のマイクロバイオームに関するこれまでで最も包括的なデータセットを利用して、こうした過渡期に新たな光を当てている。TEDDY(The Environmental Determinants of Diabetes in the Young)研究は、米国、スウェーデン、ドイツ、フィンランドの6か所の研究施設にまたがって行われている。一方の論文ではJ Petrosinoたちが、3~46か月齢の903人の小児から毎月得た約1万2000の糞便試料について、遺伝子配列解読技術を用いて分析している。彼らは、このコホートのマイクロバイオームの発達の特徴を評価して3つの異なる段階に分けるとともに、重要な要因の中でも特に母乳哺育が、この過程にいかに大きく寄与しているかを突き止めている。もう一方の論文ではC Huttenhowerたちが、TEDDY研究において783人の小児から得られた約1万1000の糞便試料を分析して、1型糖尿病に関する小児期早期の腸マイクロバイオームの特徴付けを行った。その結果、1型糖尿病を将来発症しない乳幼児のマイクロバイオームには、発酵や短鎖脂肪酸の合成に関連する遺伝子がより多くあり、これらが1型糖尿病に対する保護作用を持つ可能性が示唆された。
2018年10月25日号の Nature ハイライト
太陽物理学:長期間にわたる太陽ニュートリノの詳細な観測
固体地球科学:隕石衝突構造にピークリングを作った強度の大きな岩石
持続可能性:食料需要が環境へ及ぼす影響の評価
がん:急性骨髄性白血病治療に有望な基盤
微生物生態学:バチルス属細菌は病原性黄色ブドウ球菌の定着を排除する
生化学:p300アセチルトランスフェラーゼの活性化
天文学:ハッブル定数は5年間以内に精度よく決まる
化学生物学:メチオニン部位でのタンパク質官能基化
神経科学:神経変性における老化細胞の役割
発生生物学:生殖細胞の数を適正に保つ
腫瘍免疫学:LILRB4は腫瘍細胞の浸潤を誘導する