Nature ハイライト
Cover Story:運動の自由度:金属から超伝導体への完全なトンネリングを達成する電子
Nature 570, 7761
今回、竹内一郎(米国メリーランド大学カレッジパーク校)たちは、常伝導金属とトポロジカル超伝導体の間のコンタクトバリアを通る電子の完全透過を示す証拠を報告している。この研究は、粒子が2つの物質の間のバリアをあたかもそれが全くないかのように通ることのできる、クライントンネリングという特殊相対性理論的な効果を観測したものである。電子(金色の球体)がバリアを通過すると、パートナーとなる電子を捕らえてクーパー対(トンネルの向こう側の電子対)を形成する。その結果、正に帯電した正孔(黒色の球体)がバリアから反射されて戻る。一般的には、バリアで電子がいくらか散乱され、この過程は抑制される。しかし、トポロジカル超伝導体とのバリアでは電子の散乱は完全に禁じられる。従って、完全な電子のトンネリングと正孔の反射によってコンダクタンスは正確に2倍になり、今回の観測結果は、これを裏付けている。著者たちは、完全透過がコンタクトバリアの起源に関係なく生じることを見いだすとともに、この知見が量子情報処理に役立つ可能性を示唆している。
2019年6月20日号の Nature ハイライト
神経科学:自閉症モデルの作製
神経科学:アルツハイマー病の進行の分子的概観
免疫学:NLRP3活性化の機構
材料科学:ナノチューブにおける増強された光起電力効果
ナノスケール材料:ねじれたファンデルワールスナノワイヤー
材料科学:応力で現れる構造色
進化学:性選択への新しい道筋
細胞生物学:断片化がミトコンドリアの選択を引き起こす
がんゲノミクス:がんの検出における無細胞DNAの断片化解析
構造生物学:一般市民によるタンパク質設計