Research press release

【素粒子物理学】まれにしか起こらない放射性崩壊の検出

Nature

ニュートリノを放出しない二重ベータ(0nββ)崩壊をバックグラウンドフリーで探索する方法を記述した論文が、今週掲載される。この放射性崩壊が検出されれば、ニュートリノが自身の反粒子であることが証明される。

素粒子物理学の標準模型の特定の拡張版は、ニュートリノが自身の反粒子であると仮定することで我々の宇宙に物質が反物質よりも多く含まれていることを説明する。これが正しければ、放射性崩壊の一種である0nββ崩壊(2個の電子が放出されるがニュートリノは放出されない原子核の崩壊)が存在するはずだ。ところが0nββ崩壊の半減期は、我々の宇宙の年齢より少なくとも15桁長いため、0nββ崩壊を観測するためには、その検出を妨げる恐れのあるバックグラウンド信号を全て抑制することが必要になる。

今回、GERDA(GERmanium Detector Array、ゲルマニウム検出器アレイ)実験チームは、35.6 kgの76Ge同位体で0nββ崩壊を探索する第2期のGERDA実験で得られた最初のデータを報告している。この論文の著者は、バックグラウンド事象を拒否するシステムを使用して、この分野で初のバックグラウンドフリーな実験を実現したことを報告している。ただし、0nββ崩壊の兆候は見つからなかった。

同時掲載されるPhillip BarbeauのNews & Views記事では、このバックグラウンドフリーな結果が「この分野にとって注目すべき成果であり、今後は0nββ崩壊に対する感度の高い探索ができるようになる」と指摘されている。

A background-free search for neutrinoless double-β (0nββ) decay - a radioactive decay that, if found, would prove that neutrinos are their own antiparticles - is presented in this week’s Nature.

Certain extensions of the Standard Model of particle physics explain the dominance of matter over antimatter in the Universe by assuming that neutrinos are their own antiparticles. If this holds true, then a form of radioactive decay called 0nββ decay - in which an atomic nucleus decays and emits two electrons and no neutrinos - should exist. However, because the half-life for 0nββ decay is at least 15 orders of magnitude longer than the age of the Universe, its observation would require the suppression of all background signals that may interfere with its detection.

The GERDA (GERmanium Detector Array) Collaboration report the first data from Phase II of the GERDA experiment, in which they have searched for 0nββ decay in 35.6 kilograms of the isotope 76Ge. By using a system that vetoes background events, the authors report that they have achieved the first background-free experiment in the field. However, they have found no hint of 0nββ decay.

In an accompanying News & Views article, Phillip Barbeau notes that the background-free result is “a remarkable achievement for the field, suggesting that future searches will be highly sensitive to 0nββ decay.”

doi: 10.1038/nature21717

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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