Research press release

【気候科学】「地球温暖化の停滞」に関して見解が分かれている理由

Nature

地球温暖化に対する人間活動の長期的影響についての理解は、1998~2012年頃に起こった「地球温暖化の停滞」によっても揺るがないことを報告するIselin MedhaugたちのAnalysis論文が、今週掲載される。

この分析研究では、文献の検討に加えて、さまざまなモデルといわゆる「地球温暖化の停滞」以降の観測的証拠の再評価が行われた。この停滞期間中(1998~2012年)、地球の表面温度が気候予測から予想されるほどの上昇をしておらず、一部のモデルと観測結果が相互に矛盾していると考えられていた。こうした現象のために、少なくとも一部の人々が気候システムに関する現在の理解に対して疑問を呈している。例えば、人為的な気候変動と自然変動の理解がどの程度進んでいるのか、という疑問だ。これに対して、Medhaugたちは、結論が異なっている主な理由は、使用されたデータセット、対象期間、停滞期間の定義がそれぞれ異なっていた点にあると考え、モデルと観測結果を適切に処理すれば、両者間の不一致を解消できることを実証した。

直近の観測結果により、温暖化が停滞したと考えられている期間中にも気候温暖化が続いていたことが実証されており、2015年と2016年は、地球表面温度の記録上非常に高温の年となった。Medhaugたちは、地球温暖化の停滞が現在の気候システムに関する全体的な理解と矛盾していないという結論を示している。

同時掲載されるJames S. RisbeyとStephan LewandowskyのNews & Views記事には、次のように記されている。「温暖化の停滞に関する研究から得られる最も顕著な教訓は、定義を明確にし、停滞とされる現象を定量化、一般化できるように説明することが必要だということかもしれない。異常な気候事象に関する主張を用語の定義によって支えようとするのであれば、我々が用いるツールの場合と同じように定義の明確化が必要である」。

The ‘global warming hiatus’ that occurred between about 1998 and 2012 does not change our understanding of the influence of human activity on long-term warming, reports an Analysis in Nature this week.

Iselin Medhaug and colleagues review literature and reassess various models and observational evidence gathered since the so-called hiatus. During this period (1998-2012), Earth’s surface temperature did not seem to rise as expected from climate projections, and some models and observations seemed to be contradictory. These phenomena raised questions about our understanding of the climate system, at least in some quarters, including how well anthropogenic climate change and natural variability are understood. However, the authors find that different conclusions mostly result from the use of different datasets, different time periods and different definitions of a hiatus period. They demonstrate that, with appropriate treatment of models and observations, discrepancies can be reconciled.

More recent observations demonstrate that despite the apparent hiatus, the climate is continuing to warm, with 2015 and 2016 being the two warmest years on record. The authors conclude that the hiatus does not contradict our overall understanding of the climate system.

“Perhaps the most salient lesson to be learnt from work on the pause is the need for clarity of definition and for quantifiable, generalizable accounts of the alleged phenomenon,” writes James Risbey in an accompanying News & Views article. “Our definitions, like our tools, need sharpening if they are to sustain claims about unusual climate events.”

doi: 10.1038/nature22315

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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