【気候科学】アイススラブが成長するとグリーンランド氷床の融解水流出が増える
Nature
2001年以降、グリーンランド氷床で融解水流出が起こっている部分の総面積が、アイススラブ(厚さが数メートルの透水性が低い氷)のために約26%増加したことを報告する論文が、今週掲載される。アイススラブは成長を続けているため、2100年には、融解水流出が起こっている面積の増加が全球的な海面上昇に寄与する度合いが、温室効果ガス排出シナリオによって7~74ミリメートルとなる可能性のあることが今回の研究で示唆されている。
アイススラブとは、既存の氷の層の間で融解水が再凍結し、2年以上をかけて形成される(厚さ1メートル以上の)氷の層のことで、全長が数十キロメートルにわたることもある。透水性が低いため、氷床の表面の融解水は(海面上昇の緩衝機構として機能することのある)多孔質の雪に再吸収されることはない。
今回、Michael MacFerrinたちの研究グループは、アイススラブの形成を定量化することに取り組み、(温室効果ガス排出量が2040年までにピークに達する)中排出シナリオと(温室効果ガス排出量が21世紀の終わりまで増加し続ける)高排出シナリオの下でのアイススラブの成長とそれが融解水流出に及ぼす影響の可能性を予測した。MacFerrinたちは、2013年末の時点で、アイススラブに覆われた地域の面積が、1990年以前のグリーンランドで融解水流出が起こっていた面積より62100~78900平方キロメートル広かったことを明らかにした。また、MacFerrinたちのモデルでは、いずれのシナリオによってもアイススラブに覆われる地域の面積が2050年にほぼ倍増し、2100年には、アイススラブに覆われる地域からの融解水流出量が、アイススラブのないシナリオによる融解水流出量の推定値の2倍になると予測されている。
Ice slabs (metres-thick, low-permeability ice) in Greenland have increased the ice sheet’s total meltwater runoff area by around 26% since 2001, reports a paper in Nature. As ice slabs continue to expand, the study suggests that the additional area of meltwater runoff could contribute 7 - 74 mm to global sea-level rise by 2100 under different emissions scenarios.
Ice slabs are layers of ice (at least one metre thick) that form over multiple years when meltwater refreezes between existing ice layers. They can span tens of kilometres and their low permeability means that surface meltwater from the ice sheet is not reabsorbed by porous snow (which can act as a buffer to sea-level rise).
Michael MacFerrin and colleagues set out to quantify the formation of ice slabs and predict their growth and its potential effect on meltwater runoff under moderate- and high-emissions scenarios (greenhouse gas emissions peaking by 2040 or continuing to rise through the 21st century, respectively). The authors find that as of the end of 2013, ice slabs cover an additional 62,100-78,900 km2 compared to Greenland’s runoff area before 1990. Under both scenarios, their model predicts that the area covered by ice slabs will approximately double by 2050, and by 2100 the volume of meltwater runoff from areas covered by ice slabs will be double the estimated runoff for a scenario without ice slabs.
doi: 10.1038/s41586-019-1550-3
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