免疫学:ワクチンによって誘導されるオミクロン変異株に対するT細胞応答は他の変異株に対するものとほぼ同程度だった
Nature
ワクチンによって誘導されるスパイクタンパク質特異性T細胞応答は、オミクロン変異株に対しても高度に保存されていることを示すデータを発表する論文が、Nature に掲載される。
オミクロン株については、現行のワクチンによって誘導される中和抗体応答のかなりの部分を回避することが、最近の研究で示されている。しかし、ワクチンによって誘導される細胞性免疫応答(T細胞応答)の効果は、明らかになっていない。
今回、Jinyan Liu、Dan Barouchたちは、米国ボストン在住の47人を対象として、CD8+ T細胞応答とCD4+T細胞応答を評価した。参加者の内訳は、ジョンソン&ジョンソン社製ワクチンの単回接種を受けた20人とファイザー・ビオンテック社製ワクチンの2回接種を受けた27人だった。全ての参加者は、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染歴がなく、ヌクレオカプシド抗体検査が陰性だった。
Liuたちは、これら2種のワクチンが、接種から8か月後の時点で、スパイクタンパク質に特異的なCD8+ T細胞応答とCD4+T細胞応答を誘導し、祖先スパイクタンパク質WA1/2020、デルタ変異株とオミクロン変異株のいずれに対する細胞応答もほぼ同程度であることを細胞内サイトカイン染色アッセイによって明らかにした。オミクロン株に特異的なCD8+ T細胞応答の中央値は、WA1/2020に特異的なCD8+ T細胞応答の82~84%であり、CD4+T細胞応答の中央値は、WA1/2020に特異的なCD4+T細胞応答の82~100%であったことを示唆するデータが得られた。これとは対照的に、SARS-CoV-2の感染歴がなく、ワクチン未接種の5人において、スパイクタンパク質に特異的なCD8+ T細胞応答とCD4+T細胞応答は無視できる程度だった。
今回の研究で得られた知見は、CD8+ T細胞とCD4+T細胞が、オミクロン株と相当程度の交差反応をすることを実証しているが、Liuたちは、一部の患者において、これとは異なる細胞応答が観察される可能性に注意を喚起している。また、この論文は、ファイザー・ビオンテック社製ワクチンを接種された2人の参加者のオミクロン株に対するCD8+T細胞の応答が検出不能だったことにも言及している。
Spike-protein-specific T cell responses induced by vaccination are well conserved against the Omicron variant, according to data presented in a paper, published in Nature.
Recent studies have indicated that Omicron substantially evades neutralizing antibody responses elicited by current vaccines. However, the effect on vaccine-elicited cellular immune responses (T cell responses) is unclear.
Jinyan Liu, Dan Barouch and colleagues assessed CD8+ and CD4+ T cell responses in 47 individuals in Boston (USA) who had received either one dose of the Johnson & Johnson vaccine (20 participants) or two doses of the Pfizer–BioNTech vaccine (27 participants). None of the participants had previously been infected with SARS-CoV-2 and had negative nucleocapsid antibody responses.
Using intracellular cytokine staining assays, the authors report that, 8 months after vaccination, both types of vaccine induced comparative spike-protein-specific CD8+ and CD4+ T cell responses against the ancestral WA1/2020, Delta and Omicron variants. The data suggests that median Omicron-specific CD8+ T cell responses were 82–84% of WA1/2020-specific responses, and CD4+ T cell responses were 82–100% of WA1/2020-specific responses. By contrast, 5 unvaccinated individuals who had never been infected had negligible spike-specific CD8+ and CD4+ T cell responses.
These findings demonstrate substantial CD8+ and CD4+ T cell cross-reactivity with Omicron, although the authors caution that responses may be different in some individuals. The authors also note that two individuals who received the Pfizer–BioNTech vaccine had undetectable CD8+ T cell responses against Omicron.
doi: 10.1038/s41586-022-04465-y
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