社会科学:米国内で一般に見られる大学教員採用の不平等
Nature
米国の大学教員の大半は、米国内の数少ない名門大学の博士号取得者であることを明らかにした研究論文が、Nature に掲載される。この知見は、米国内で博士号(PhD)を授与している大学全ての約10年分の新規雇用・継続雇用データを分析して得られたもので、衡平性を高め、多様性をより適切に反映させるための取り組みの指針となる可能性がある。
大学スタッフの新規雇用と継続雇用は、米国内の大学の労働力を形作る上で非常に重要であり、教育、キャリア、研究課題に直接影響を与え、究極的にはアイデアの拡散にも影響を与える。しかし、限られたデータしかないため、分野や大学の垣根を超えて長期にわたって存在している可能性のある新規雇用・継続雇用の動態の一般的なパターンを定量化できていない。
今回、Daniel Larremoreたちは、米国内で博士号を授与している大学全てにおける2011年から2020年までの教員(368大学の1万612学部で採用された29万5089人)の新規雇用と継続雇用を調べた。Larremoreたちの分析で、米国内に一般に存在する不平等とピラミッドの険しい社会階層の両方が明らかになった。例えば、米国内で教育を受けた教員の80%が博士号を取得した大学は、全大学のわずか20.4%だった。また、博士号を取得した大学よりも名声の高い大学に勤務している教員は、専門領域(例えば自然科学)や専門分野(物理学や生態学など)にもよるが、わずか5~23%で、大学における社会的流動性の欠如を反映している。さらに、今回の研究の対象だった研究領域(8領域)の全てと研究分野(107分野)の75%で、過去10年間に女性の存在が大学教員数により適切に反映されるようになったが、この統計値が、新規雇用された教員に占める女性の割合に反映されていない。Larremoreたちは、女性の存在が大学教員数により適切に反映されるようになったのは、退職した教員に占める男性の割合が不相応に大きかったためとしている。
Larremoreたちは、以上の研究知見が、米国内で大学教員の新規雇用と継続雇用の不平等が一般に見られることを明らかに示していると結論付け、この不平等を是正する戦略を改善するためには、今後の研究によって不平等の根底にある原因を解明することが必要だと力説している。
The majority of US faculty members have doctorates from a small minority of prestigious US universities, according to a study published in Nature. These findings — from an analysis of almost a decade of hiring and retention data from all PhD-awarding universities in the US — may guide efforts to improve equity and representation.
Hiring and retaining university staff is key to shaping the academic workforce in the US, directly influencing education, careers, research agendas and ultimately, the spread of ideas. However, limited data have prevented the quantification of general patterns of hiring and retention dynamics that may exist over time, across disciplines and universities.
Daniel Larremore and colleagues examined faculty hiring and retention in every PhD-granting university in the US between 2011 and 2020 (a total of 295,089 people hired in 10,612 departments across 368 universities). The authors’ analyses reveal both universal inequalities and steep social hierarchies. For example, 80% of faculty trained in the US received their PhDs from just 20.4% of the universities. Only 5–23% of staff were found to be working at a university that was more prestigious than where they earned their PhD, depending on domain (for example, natural sciences) or field (such as physics or ecology), which reflects a lack of academic social mobility. Although the overall representation of women in academia increased in all eight domains studied and in 75% of the 107 fields studied over the past decade, these figures are not reflected in the percentage of new hires, with the authors attributing the overall increase to a disproportionate number of men among retiring faculty members.
The authors conclude that these findings showcase the universal inequalities that exist in US faculty hiring and retention. They go on to emphasize that future research will be needed to understand the underlying causes of this disparity to improve mitigation strategies.
Wangたちは、FRB 20201124Aについて観測された特性を説明する物理モデルを提示している。Wangたちは、反復する高速電波バーストの発生源が、マグネターと円盤を持つBe型星(太陽よりも温度が高く、大きく、速く自転する星)を含む連星系だとする考えを示し、今後の研究では、高速電波バースト信号を求めてBe型X線連星を探索すべきだと提案している。
doi: 10.1038/s41586-022-05222-x
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