気候:熱帯林での森林伐採は降水量の減少を引き起こす可能性がある
Nature
森林伐採が進んだ地域では降水量が減少しているという傾向が熱帯全体で見られることが、このほど実施された分析研究で明らかになった。今回の研究結果は、2100年のコンゴの森林伐採率の予測値を前提とした場合に同国内の降水量が8~10%減少するかもしれないことも示している。この研究について報告する論文が、Natureに掲載される。
熱帯林は、エネルギー、水、炭素循環に影響を与えるため、気候の調節に重要な役割を果たしている。また、局地的な降水パターンや地域的な降水パターンにも影響を与えている。例えば、蒸発散は、地域降雨の強力な駆動要因であり、アマゾン盆地の平均降水量の41%、コンゴの平均降水量の約50%を占めている。森林伐採がどのような役割を果たすのか、降水量にどのような影響を及ぼすのかといった疑問については、一定数のプロセスがさまざまなスケールで発生しているため、確かな答えが得られていない。アマゾン盆地では、小規模な森林伐採と降水量の増加との関連が明らかになっているが、インドネシアでは、森林伐採が降水量の減少とエルニーニョ現象による影響の深刻化と関連付けられている。
今回、Callum Smithたちは、降水量に関して森林減少がどのような役割を果たすのかという点を調べるため、アマゾン盆地、コンゴ盆地と東南アジアにおける2003年から2017年までの森林被覆の変化に関する人工衛星データセットを解析し、森林減少地域を特定した。Smithたちは、このデータと18種類の降水量データセットを合わせて検討した。その結果、森林伐採の規模が大きくなるにつれて、森林伐採が降水量に及ぼす影響が大きくなることが判明した。つまり、森林減少を原因とする降水量の大幅な減少は、森林減少の空間規模が50キロメートルを超えると発生し、200キロメートルで最大の降水量減少が観測されたのだ。森林減少を原因とする降水量の絶対変化量は、雨季に最大となった。Smithたちは、2100年のコンゴの森林伐採率の予測値を前提とした場合に同国内の降水量が8~10%減少するかもしれないという見解を示している。
Smithたちは、熱帯林を保全して、気候の回復力を支援する必要のあることが、今回の知見によって示されていると結論付けている。
Deforested regions across the topics show reductions in precipitation, an analysis published in Nature demonstrates. The findings indicate that in 2100 projected rates of deforestation in the Congo could reduce local precipitation by 8–10%.
Tropical forests have an important role in regulating climate due to their influence on energy, water and carbon cycles. They also influence local and regional precipitation patterns; evapotranspiration, for example, is a strong driver of regional rainfall accounting for 41% of basin mean rainfall in the Amazon and nearly 50% in the Congo. The role of deforestation and its impact on precipitation is uncertain due to the range of processes happening and the different scales. In the Amazon, small-scale deforestation has been linked to an increase in precipitation but in Indonesia it has been linked to a decrease in rainfall and exacerbation of El Niño impacts.
To explore the role of forest loss on precipitation, Callum Smith and colleagues analysed a satellite dataset of forest cover change from 2003 to 2017 with a focus on the Amazon, Congo and Southeast Asia to identify areas of forest loss. They combined this information with 18 different precipitation datasets. The authors found that the impact of deforestation on precipitation increased at larger scales; robust reductions in precipitation owing to forest loss occurred at spatial scales greater than 50 km, with the greatest reductions observed at 200 km. Absolute changes in precipitation as a result of forest loss were greatest in the wet season. The authors suggest that projected rates of deforestation could lead to a reduction in local precipitation of around 8–10% in the Congo by 2100.
The authors conclude that their findings demonstrate the need for tropical forest conservation to support climate resilience.
doi: 10.1038/s41586-022-05690-1
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