Research press release

遺伝学:銅器時代の終焉に関する手掛かりとなる古代ゲノムのデータ

Nature

古代人のゲノムデータを解析した研究で、銅器時代の農民とステップ牧畜民の交流が、従来考えられていたよりも1000年早く起こっていた可能性のあることが示唆された。このことを報告する論文が、Natureに掲載される。この知見は、紀元前3300年ごろの銅器時代の終焉と牧畜民集団の拡大を理解する上で役立つ可能性がある。

これまでに実施された古代ゲノムデータの解析から、西ユーラシアで2つの大きな遺伝的入れ替え(ターンオーバー)現象が起こっていたことが示唆されている。1つが、紀元前7000~6000年ごろの農耕の普及に関連したターンオーバーで、もう1つが、紀元前3300年ごろから始まったユーラシアのステップ出身の牧畜民集団の拡大に起因するターンオーバーだ。この2つの現象の中間の時代である銅器時代は、それまでになかった新しい経済を特徴としており、経済の基盤をなしたものが、冶金、車輪、荷馬車による輸送、馬の家畜化だった。しかし、銅器時代の居住地の消滅(紀元前4250年ごろ)から牧畜民の拡大の間に何が起こったのかは、十分に解明されていない。

今回、Wolfgang Haakらは、南東ヨーロッパと沿黒海地方北西部地域の8つの遺跡で出土した紀元前5400~2400年の古代人(135人)の遺伝的データを解析した。その結果、新石器時代と銅器時代のヒト集団の間に遺伝的連続性が認められたが、紀元前4500年ごろ以降は、沿黒海地方北西部地域から移ってきた集団の個体が保有する銅器時代の集団とステップ地帯の集団のゲノム塩基配列の量に大きなばらつきのあることが判明した。Haakらは、今回の知見から、これらの集団が文化的な接触をして、混合したのが、これまで考えられていたよりも約1000年早かったことが示唆されたという見解を示し、紀元前3300年頃の牧畜民集団の台頭、形成、拡大には、異なる地理的区域を出身地とする農民や移行期の狩猟民の間での技術移転が不可欠だったという学説を提案している。

doi: 10.1038/s41586-023-06334-8

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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