天文学:ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が遠方銀河で炭素質の塵を検出した
Nature
誕生から10億年未満の銀河に炭素質の塵が存在することを示唆するジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)の観測結果を報告する論文が、今週、Natureに掲載される。この塵には水素やヘリウムより重い元素が含まれており、この特徴は、天の川銀河(誕生後130億年超)のような古い銀河に限られたものだと考えられている。この知見は、宇宙塵の形成に関する既存の理論に疑問を投げ掛ける可能性がある。
星間塵は、死を迎えつつある星から生成されるため、銀河進化のマーカーと考えられている。初期宇宙では、炭素のような重い元素は少なかったと考えられている。これとは対照的に、天の川銀河のような古い銀河には、炭素質の塵粒子(例えば、芳香族炭化水素)が含まれていると考えられている。これは、特定の紫外線周波数の光の吸収による「へこみ」の観測に基づいている。
今回、Joris Witstokらは、JWSTに搭載された機器を使って、複数のはるかに若い銀河が発する紫外線の吸収による同様の「へこみ」を観測した。これらの銀河には、ビッグバンから約10億年後の時代の銀河が含まれており、この観測結果は、炭素を含む塵の存在を示唆している。以上の知見は、より重い元素はそれほど速く形成されないという、塵の形成に関する現在の学説と矛盾している。Witstokらは、初期銀河における炭素質粒子の形成が比較的短い時間スケールで起こることが示唆されたことは、炭素質粒子が急速に形成する過程が存在することを意味すると考えている。例えば、高速で膨張する星(ウォルフ・ライエ星)や超新星からの放出物質がある。
doi: 10.1038/s41586-023-06413-w
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