技術:夜間の周囲景観を昼間のように明確に知覚する熱補助型の検出装置
Nature
熱検出装置を組み込んでコンピューター視覚・測距システムの性能を向上させる新技術について記述した論文が、今週、Natureに掲載される。この手法は、夜間における物体の知覚と識別を向上させることができるため、自動運転車のナビゲーションに応用できる可能性がある。
機械が周囲の環境を知覚する能力は、人間とロボット(自動運転車やヘルパーロボットを含む)の社会的相互作用に関係しており、各種の機械はこの能力によって、人間の介入なしに意思決定を行うことができる。カメラを利用した機械視覚は、照明に依存するため、多くの機械は、可視域以外の情報(ソナー、レーダー、光検出測距〔LiDAR〕など)によるセンサーを使って機械視覚を向上させている。熱シグナルも、景観の知覚を補助するために使用できるが、物体は常に熱放射を放出・散乱しているため、熱視覚には物質特異性がないことが多く、ぼやけた、不明瞭で質感のない画像が生成される可能性がある。
このほど、Zubin Jacobらは、熱物理学と機械学習を用いて、夜間の検出性能を向上させたHADAR(heat-assisted detection and ranging、熱補助型の検知および測距)を開発した。HADARは、熱シグナルの乱れを除去する技術を採用している。今回の研究では、HADARが暗闇の中で質感や奥行きを感知でき、物理的属性を知覚できることが実証された。HADARは、現在利用可能な熱測距技術よりも夜間の精度が高く、昼間の精度は、これまでの照明を用いたRGBカメラによる立体視に匹敵する。
Jacobらは、HADARには実用上の課題(リアルタイムでのデータ収集、被写体ぶれ、コストなど)が残っているが、自動ナビゲーションや野生生物の監視などの幅広い用途が期待できると主張している。
doi: 10.1038/s41586-023-06174-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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