Research press release

古生物学:史上最も重い動物となるかもしれない巨大な古代クジラ

Nature

新たに発見されたクジラの古代種Perucetus colossusは、化石記録上、最も大きく、最も重い動物と考えられることを報告する論文が、Natureに掲載される。このクジラの部分骨格から推定された体長と体重は、これまで最も重い動物と考えられていたシロナガスクジラに匹敵する。今回の知見は、海洋哺乳類の巨大化傾向が、これまで考えられていたよりも早く始まった可能性を示唆している。

一部の陸生動物が海に戻った時代の哺乳類の進化史を記録する上で、クジラ目(イルカ、クジラ、ネズミイルカを含む哺乳類の亜目)の化石記録は非常に重要だ。これまでに発表された化石記録では、クジラ目動物の水生生活への適応(例えば、巨大化傾向とそれに伴う体重の増加)が確認されているが、体重が最大に達したのは、比較的最近の多様化によるものと考えられている。

今回、Eli Amsonらは、推定骨格量が既知の哺乳類や海洋生物を上回っているバシロサウルス科のクジラの新種P.colossusについて報告している。P.colossusは、最近ペルー南部で発見され、約3900万年前のものと推定された部分骨格(13本の脊椎、4本の肋骨、1本の寛骨を含む)を基にしてモデル化された。P. colossusの骨格量は、体長25メートルのシロナガスクジラの2~3倍と推定され、体重は85~340トンと推定された。この推定体重がシロナガスクジラの体重と同等かそれ以上であるため、P. colossusは、シロナガスクジラに代わって史上最も重い動物になると考えられる。

以上の知見は、P. colossusの特徴が水生環境に十分に適応しており、クジラ目動物の体重が最大化した時期が、これまで考えられていた時期より3000万年も前と推定されることを示している。骨量の増加に伴う浮力の変化は、浅海での生活と整合しており、バシロサウルス科のクジラ類が、この種の沿岸環境に過度に特殊化していたという学説を裏付けており、クジラ目の古代種に関する新たな手掛かりになっている。

doi: 10.1038/s41586-023-06381-1

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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