Research press release

計算機科学:AI音声認識のエネルギー効率を高めるアナログチップ

Nature

エネルギー効率を従来のデジタルコンピューターチップの14倍に高めたアナログ人工知能(AI)チップを発表する論文が、今週、Natureに掲載される。このチップは、IBM Researchによって開発されたもので、汎用プロセッサーよりも高い効率で音声認識を実行することが示された。もっと強力で効率的な計算能力が求められるために生じている現在のAI開発におけるボトルネックが、このチップを用いることで解消されるかもしれない。

AI技術の台頭に伴って、エネルギーや資源の需要も高まっている。音声認識の分野では、ソフトウエアの改良によって自動文字起こしの精度が大幅に向上したが、メモリとプロセッサーの間を移動するデータの数が増え続けているため、ハードウエアはAIモデルの訓練と動作に必要な数百万のパラメーターに対応できなくなっている。この問題に対して提案されている解決策の1つは、コンピュート・イン・メモリチップというアナログチップ(CiMチップ、アナログAIチップ)を使用することだ。アナログAIチップを使用するシステムは、自身のメモリ内で直接計算を実行することによって非効率性を回避する。これに対して、デジタルプロセッサーは、メモリ・プロセッサー間のデータ移動のために余分の時間とエネルギーを必要とする。アナログAIチップはAI計算のエネルギー効率を大幅に向上させると予測されているが、実際的な証明が行われていなかった。

今回、Stefano Ambrogioらは、3500万個の相変化メモリセルが配置された34枚のタイルからなる14ナノメートルのアナログチップを作製した。このチップの言語処理能力における効率は、2種類の音声認識プログラム(小規模なネットワークプログラム〔Google Speech Commands〕と大規模なネットワークプログラム〔Librispeech〕)を用いて検証され、チップの性能評価は、自然言語処理タスクを使用した業界標準を基に行われた。小規模なネットワークでの性能と精度は、既存のデジタル技術と同程度だった。より大きなLibrispeechモデルでは、このチップの効率はワット当たり毎秒12.4兆演算となり、従来の汎用プロセッサーより最大14倍も効率的なシステム性能を持つと評価された。

Ambrogioらは、今回の研究では、小規模モデルと大規模モデルの両方でアナログAI技術の性能と効率性が確認され、この技術が商業的に成り立つデジタルシステム代替手段としてますます有望になったと結論付けている。

doi: 10.1038/s41586-023-06337-5

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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