健康:低・中所得国における乳幼児の成長障害
Nature
低・中所得国における乳幼児の成長不全の程度と持続性に加えて、その原因と考えられる事項と影響を明らかにした3編の論文が、今週、Natureに掲載される。これらの研究では、これまでの研究(33件)で収集された南アジア、サハラ以南のアフリカ、中南米の乳幼児の合計8万人以上のデータが統合され、新たな縦断的解析が行われた。これらの知見は、妊婦と乳児の健康を改善するための介入にさらに注力することが、その後の成長阻害と健康障害を軽減するために必要であると示唆している。
世界の5歳未満の乳幼児のうち、4500万人が消耗症(栄養不良を原因とする脂肪組織と筋肉組織の減少)を発症し、1億4900万人が発育不全(身長が国際基準を下回る)を発症していると推定されている。これら2つのタイプの成長障害は、いずれも認知発達障害、疾病、死亡のリスク増加に関連している。この世界的な課題に対処することは、持続可能な開発目標(SDG)2の重要な達成基準の1つとなっている。成長遅滞に対処するために栄養改善などの介入が必要だが、最も重点的に対応する必要のある集団と年齢層に関する情報が不足している。大部分の介入は、生後6~24カ月の乳幼児に重点が置かれている。
Jade Benjamin-Chungらは、5万2640人の乳幼児を対象とした解析によって得られた発育不全の発生時期と症状の逆転(あるいは逆転が起こらないこと)に関する知見を示している。発育不全の発症率が最も高かったのは生後3カ月までで、南アジアでは出生時の発育不全の発症率がかなり高かった。Benjamin-Chungらは、生後0~15カ月の間に発育不全の症状が逆転することはまれであり、発育不全の症状が逆転した乳幼児において再発頻度が高かったことを指摘している。
一方、Andrew Mertensらは、33コホートのうちの21コホートの乳幼児の一部(1万1448人)を対象として、消耗症の状態を評価した結果を報告している。消耗症の発症率は、出生時から生後3カ月の間にピークに達していた。生後24カ月以内に消耗症を発症した乳幼児の数は、これまでの研究における推定値を上回っており、この期間中に研究コホートの乳幼児の29.2%が消耗症を発症し、10%が2回以上発症していた。生後6カ月までに消耗症を発症した乳児は、その後に発症した乳幼児よりも回復期間が短かったが、消耗症を早期に発症した乳幼児は、その後の成長停滞のリスクが高くなった。Mertensらは、消耗症の有病率の季節変動性(特に季節性降雨量の多い地域)を指摘し、雨期に消耗症の発症率が最も低くなったと述べている。
また、別の論文では、Andrew Mertensらが、乳幼児8万3671人の成長障害の原因と考えられる事項と影響を評価した結果を報告している。生後早期(生後6カ月まで)に成長遅滞になった乳幼児は、その後も成長遅滞が持続する傾向があり、男児は女児よりも成長遅滞のリスクが高いことが分かった。また、複合的な成長障害を起こした乳幼児は、成長障害のない乳幼児と比べて、生後2歳までの死亡率が高かった。全体として、乳幼児のその後の成長が改善することの強力な予測因子としては、妊娠中と出産後の母親の状態、出生直後の時期の乳児の状態と家庭の状態(例えば、雑然としていないかや、調理にクリーンな燃料を使っているか)が挙がっている。以上の知見から、生後1000日間の全般的な母子の健康を改善するための介入だけでなく、家庭環境と衛生状態が重要なことが強調されている。
doi: 10.1038/s41586-023-06418-5
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