環境:米国での山火事に関連した大気の質の低下
Nature
米国の山火事の煙は、米国本土の約75%の州で大気の質に顕著な影響を与えており、過去数十年間にわたる大気の質の改善傾向が、一部の地域で反転し始めたことが明らかになった。このことを報告する論文が、Natureに掲載される。
米国における大気の質は、大気浄化法などの政策が実施されたこともあって、ここ数十年で着実に改善されてきている。しかし、この改善の流れが、米国内のかなりの地域で停滞し、一部の地域では、一連の健康転帰の悪化と関連付けられている汚染物質である微小粒子状物質(PM2.5)の濃度が上昇していることが報告されている。この傾向に影響を及ぼしている要因の1つが山火事とされ、近年になって、その規模が大きくなり、発生頻度と強度も上昇している。
今回、Marshall Burkeらは、2000~2022年に地上の観測施設と人工衛星によって観測された大気汚染データを総合して、PM2.5の動向に対する山火事の煙の寄与を調べた。その結果、米国本土の48州のうち41州では、2016年までPM2.5の平均濃度が減少傾向にあったが、2016年以降はこの傾向が鈍化し(30州)、または反転し始めた(11州)ことが分かった。また、山火事の煙は、2016年以降、米国本土の48州の約75%でPM2.5の動向に顕著な影響を与え、21世紀に入ってからの大気質改善の成果の約25%を損なったことが判明した。
Burkeらは、山火事の煙は、大の気質のモニタリングを行う際に考慮しなければならない数多くの重要な要因の1つであり、その理解を深めなければ、有効な介入策を立案できないことが明らかになったと結論付けている。
doi: 10.1038/s41586-023-06522-6
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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