保全:新たな脅威に直面して絶滅の危険が増大している両生類
Nature
両生類は、依然として脊椎動物の中で最も絶滅の危機に瀕しており、その状況が世界的に悪化していることを示唆する論文が、Natureに掲載される。この知見は、第2回世界両生類アセスメントの一部で、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストのために実施された8011種の両生類の評価に基づいている。著者らは、両生類の生存と回復を支援するための投資の増額と政策対応を緊急に実施することを求めている。
2004年に実施された世界両生類アセスメント(第1回評価)では、両生類が世界で最も絶滅の危機に瀕している脊椎動物であることが示された。それ以降、この評価結果は、両生類の保護活動の指針として用いられてきた。
今回、Jennifer Luedtkeらは、世界の両生類の現状を調べるため、2022年6月に完了した第2回世界両生類アセスメント(第2回評価)の結果を分析した。第2回評価では、第1回評価の対象となった両生類種の再評価が行われるとともに、評価対象種の数が増えた。分析の結果、両生類の状況は悪化の一途をたどっており、調査対象となった両生類種の約40%が絶滅危惧種に分類されることが分かった。その原因は、第1回評価では病気が最も多かったが、第2回評価では気候変動が最も多くなった。2004年以降にレッドリスト上の分類が引き上げられた両生類種については、その原因が現在の気候変動と今後推定される気候変動の影響とされたものが全体の39%を占め、次いで生息地の減少とされたものが約37%だった。
最も大きな影響を受けたのがサンショウウオとイモリだったと報告されている。絶滅危惧種が最も集中していたのが、カリブ海諸島、メソアメリカ、熱帯アンデス山脈、カメルーン西部とナイジェリア東部の山岳地帯と森林、マダガスカル、西ガーツ山脈、スリランカだった。記録された両生類の絶滅数は増え続けており、1980年までに23種、2004年までにさらに10種、2022年までにさらに4種の合計37種が確認されており、最近になって絶滅したのはヒキガエル科のAtelopus chiriquiensisとタニガエル属のTaudactylus acutirostrisだった。
今回の知見は、第1回評価以降、世界的な両生類の絶滅危機が緩和されていないことを裏付けている。
doi: 10.1038/s41586-023-06578-4
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