機械学習:新材料の開発に有望な結果を示した学習アルゴリズム
Nature
人工知能を活用したプラットフォームを使って、新しい無機化合物の発見と合成の速度と精度を高められる可能性を示した2編の論文が、Natureに掲載される。
近年の技術の進歩によってコンピュータープログラムの性能が向上して、新しい材料を数多く特定できるようになった。しかし、新材料の発見には、新しい創造的な方法でデータを解釈する能力が根本的に必要とされるため、学習アルゴリズムの1つの能力、つまり既に学習した知識に反する結果に適応するという能力が、新材料の発見過程において妨げになっている。
今回、Ekin Cubukらは、大規模なアクティブラーニングを介して新材料発見の効率を高めるコンピューターモデルを示している。このプログラムは、既存の文献を使って訓練され、新しい化合物につながる可能性のある多様な構造候補を生成し、アクティブラーニングのラウンドを重ねることで精度が高まった。これらのモデル(Cubukらは「材料探索のためのグラフネットワーク」と呼んでいる)を使用することで、220万以上の安定構造が発見され、その精度は、構造の安定性の予測では80%を超え、組成の予測では100試行当たり33%(これまでの研究では1%だった)に改善した。
一方、Gerbrand Cederらは、自律型ラボラトリー(A-Lab)システムを開発した。A-Labは、既存の科学文献を使って訓練されており、アクティブラーニングを併用することで、指示された1つの化合物について、初期合成レシピを最大5つ作成でき、その後、ロボットアームを使って粉末化合物を合成する実験を行うことができる。1つのレシピを使った場合の合成収率が50%に満たない場合には、A-Labがそのレシピを修正して実験を継続し、目標が達成された場合または可能なレシピが尽くされた場合に実験を終了する。17日間の連続実験で、A-Labは355回の実験を行い、指示された58点の化合物のうち41点(71%)を合成することに成功した。また、Cederらは、意思決定アルゴリズムにわずかな修正を加えることで成功率が74%に上昇し、計算手法を同じように改良することで、さらに78%に上昇する可能性があることを示した。
これら2編の論文は、コンピューターのデータ処理能力の向上と既存の文献を使った訓練によって、学習アルゴリズムを使用して無機化合物の発見と合成に役立てるという手法に前途有望な進展があったことを示している。
doi: 10.1038/s41586-023-06734-w
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。