社会科学:ネット上の画像にジェンダーバイアスの実態が描き出されている
Nature
ジェンダーバイアスは、ネット上のテキストよりも画像に強く表れていることを報告する論文が、今週、Natureに掲載される。今回の知見から、こうしたジェンダーに基づく固定観念に視覚的にさらされると、人間の信念の中に存在するジェンダーバイアスが影響を受けると考えられることが示唆された。
数々のソーシャルメディアのプラットフォームや通信社、デジタル広告主を介した画像の消費が増えている。こうした増加を引き起こしている要因の1つと考えられているのは、人間は画像をテキストよりも迅速に、無意識かつ自然と、記憶に残るように処理しているという事実だ。テキストをジェンダーニュートラルにすることは可能なため、画像はテキストよりもジェンダーバイアスがかかりやすい可能性があることを示した研究があるが、大規模な分析はこれまで行われていなかった。
今回、Douglas Guilbeaultらは、ネット上の画像に見られるジェンダーバイアスの程度を調べて、テキストに見られるジェンダーバイアスと比較するため、グーグル、ウィキペディア、IMDb(インターネット・ムービー・データベース)の100万以上の画像とこれらのプラットフォームのテキストを評価し、約3500の社会的カテゴリー(医師や弁護士などの職業や、隣人や友人、同僚などの社会的役割など)に関連するジェンダーバイアスを調べた。そして、画像に写った顔がジェンダー別に分類された(全体の2%が「ノンバイナリー」に分類されたが、今回の分析では「認識されたジェンダー」に着目していたため、これらは対象から除外された)。検索結果において、男性が過大に代表されていた。この傾向は、テキストよりも画像の方が顕著で、グーグルニュースのテキストでは社会的カテゴリーの56%で男性が過大に代表されていたが、それがグーグル画像検索の画像では62%だった。例えば、配管工、警察署長、大工の検索では男性の顔が表示されがちで、バレエダンサー、美容師、看護師の検索では女性の顔が表示されがちだった。
また、Guilbeaultらは、こうしたジェンダーバイアスの影響を調べるため、450人の被験者を、グーグルニュースで特定の職業を記述したテキストを検索するグループ、グーグル画像検索で特定の職業の画像を検索するグループ、無作為に選ばれたジェンダーとは無関係の対象物を検索するグループ(対照群)に分けて実験を行った。その後、被験者は、特定の職業について最も強く連想されるジェンダーは何かという質問に回答した。その結果、画像を検索した被験者は、テキストを検索した被験者と対照群の被験者よりも強いジェンダーバイアスを示し、こうしたバイアスは数日間持続することが分かった。
Guilbeaultらは、ネット上の画像に見られるジェンダーバイアスに対処することが、インターネットを公正で誰もが排除されないインクルーシブな場とするために必須だと結論付けている。
doi: 10.1038/s41586-024-07068-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。