動物行動学:マルハナバチは群れの仲間から学んで複雑なパズルを解く
Nature
マルハナバチは、独力で学ぶには複雑過ぎる新しい行動を他の個体に教えることができることを示した論文が、Natureに掲載される。今回の研究では、パズルを解くと報酬(甘いショ糖液)をもらえることを学んだマルハナバチが、他のマルハナバチを訓練して、このパズルを解く課題を成し遂げられるようにしたことが観察された。この知見は、マルハナバチが、これまでヒトだけができると考えられてきた複雑度の高い行動の一部を社会的学習によって習得できることを示す証拠となった。
社会的学習によって習得され、長期間にわたって持続する行動は、文化と呼ばれる。動物の文化がヒトの文化と同じように累積的で、動物の系列行動がそれ以前の系列行動に基づいたものであることを示唆する証拠が増えている。ヒトの累積的文化には、非常に複雑な行動が関係しており、ヒト1人が一生の間にそうした行動を独力で発見することは、個人の能力を超えている。一方、このような複雑な行動が無脊椎動物において実証されたことはない。
マルハナバチは社会的昆虫であり、生まれ持った行動以外の行動、例えば、糸を引っ張る行動や玉をころがす行動を、社会的学習によって習得して報酬を獲得する能力を持つことが明らかになっている。今回、Alice Bridges、Lars Chittkaらは、「問題箱」課題を設定し、マルハナバチが同じコロニーの他の個体から複雑度の高い行動を習得する能力を有するかどうかを調べた。著者らは、2段階で解く「問題箱」を設計し、マルハナバチが障害物を移動させてから蓋を回転させて開くと報酬(ショ糖溶液)が現れるようにした。訓練されていないマルハナバチは、独力で試行錯誤を繰り返したが、この問題箱を解くことができなかった。実際に、実演者のマルハナバチを訓練して、この課題を遂行できるようにするために約2日を要し、第1段階を完了したところで報酬が必要になることも多かった。これに対して、訓練されていないマルハナバチが、この問題箱の開け方を実演者のマルハナバチから習得するのに、第1段階を完了したところで報酬を与える必要はなかった。
今回の知見は、マルハナバチに社会的学習能力があり、もしかすると文化を伝達する能力も持っているかもしれないことを示す証拠となる。
doi: 10.1038/s41586-024-07126-4
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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