進化学:ハクジラの閉経の進化
Nature
ハクジラ類(シャチ、シロイルカ、イッカクなど)に閉経が進化したのは、総寿命が延びたためだったという考えを示した論文が、Natureに掲載される。この知見は、閉経が進化したことで、雌のハクジラが娘や孫娘と交尾相手を奪い合うことがなくなり、若い世代の生き残りに役立ったことを示唆している。
閉経は非常にまれな現象で、その進化の過程と理由を解明することが長年の課題になっている。ヒトは女性(雌)の生殖後の寿命が長い唯一の陸上哺乳類種であることが知られているが、ハクジラ類には閉経が複数回進化したことが知られている。ヒトにおける閉経の適応上の価値の理解は進んでいるが、このような知見を他の種にも一般化できるかどうかは明らかでない。
今回、Samuel Ellisらは、ハクジラ類の閉経についての競合する複数の進化仮説を検証するために、新しい比較データベースを構築して解析を行った。その結果、閉経は、雌の生殖寿命を延長することなく総寿命を延長するために進化したことが示唆された。閉経期の雌は、家族の他の若い世代の個体を援助し、例えば、食物を分け合ったり、「仔守り」をしたり、資源が少なくなった時に群れを助けたり、息子を守ったりして、その生存の可能性を高める機会が得られる。閉経により、その個体の寿命において仔や孫の寿命と重複する期間は長くなるが、娘との生殖期の重複が長くなることはなく、繁殖競争を避けることができる。
以上の結果は、閉経は種に対する恩恵がある場合に進化することを示唆している。クジラとヒトの間には明白な相違点があるが、閉経の収斂進化は、一般的な閉経の進化を理解するための新たな手掛かりとなる。
doi: 10.1038/s41586-024-07159-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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