Research press release

公衆衛生:シエラレオネの農村部でワクチン接種の利便性を高める

Nature

移動診療所を用いて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種を実施すると、接種率が大幅に上昇したことを報告する論文が、Natureに掲載される。今回の研究は、シエラレオネの農村部コミュニティーで実施されたもので、ワクチン接種の利便性を向上させると、そのコミュニティーと周辺でワクチン接種者数にプラスの影響が及ぶことを示唆している。

アフリカでは、2023年11月までにCOVID-19ワクチンを少なくとも1回接種した人は、全人口のわずか33%だった。既存の文献は、ワクチン接種率の低い地域における行動障壁(例えばワクチン忌避)が及ぼす影響を調べる研究に関するものが大部分で、それ自体は重要な研究だが、農村部コミュニティーの人々にとってワクチン接種を受けにくくすると思われる実際的な障壁を見落としている。例えば、シエラレオネでワクチン接種が初めて実施された当時、農村部コミュニティーの平均的な住民は、ワクチン接種を受けるために片道数時間かけて移動しなければならず、その費用は1週間分の賃金を超えていた。

今回、Ahmed Mushfiq Mobarak、Niccolo Merrigi、Maarten Voorsらは、シエラレオネ国内の既存の保健ユニットの受け持ち区域外にある農村150カ所のリストを作成し、そのうちの100カ所を無作為に選んで、移動予防接種ユニットを派遣した。これらの農村のリーダーとの話し合いを実施して、それぞれの農村の住民の利用を促した後、臨時の予防接種会場が開設され、2~3日にわたって日の出から日の入りまでワクチン接種を行った。

移動診療所が訪問したコミュニティーにおけるワクチン接種は3倍に増加し、平均接種率が9.5%から30.2%に上昇した。著者らは、このワクチン接種の試行期間中に対象コミュニティーの外からワクチン接種を受けに来た人々がおり、接種率の上昇に寄与したと指摘している。今回のワクチン接種プログラムの総費用は1人当たり33ドル(約5000円)で、その中で最も大きな割合を占めたのが、現地に遠征するための交通費だった。これに対して、今回のプログラムをもっと大規模に実施すれば、1人当たりの費用は約23ドル(約3500円)まで圧縮できると考えられる。著者らは、ワクチン接種と他の医療(例えば、母親や子どもを対象とした医療)を統合することで、このプログラムに関連する費用をさらに削減でき、農村地域における医療の利便性を高める費用対効果の高い方法になるという考えを示している。

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シュプリンガー・ネイチャーは、国連の持続可能な開発目標と、学術論文誌や書籍に掲載されている関連情報や証拠の認知度を高めることに尽力しています。このプレスリリースに記載されている研究は、SDG 3(すべての人に健康と福祉を、Good Health and Well Being)に関係しています。詳細については、こちらを参照してください。(https://press.springernature.com/sdgs/24645444

doi: 10.1038/s41586-024-07158-w

「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。

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