発生生物学:心臓はどのように形成されるのか
Nature
発生中のヒト心臓の包括的な空間細胞アトラスを示した論文が、今週、Natureに掲載される。このアトラスは、いろいろなタイプの心臓細胞がどのように相互作用して、心機能にとって非常に重要な複雑な心臓構造へと組織化するかを明らかにしている。
哺乳類の体で最初に発生する臓器である心臓は、高度に組織化された構造からなり、正常に機能するためにはそれぞれの構造が協調する必要がある。こうした構造に欠陥があると、先天性心疾患や成人の心疾患の一因になる場合がある。過去数年間の単一細胞技術の発展により、科学者らは、成人の心臓細胞のタイプとそれらの前駆細胞の精密なリストを作成した。
今回、Elie Farah、Quan Zhu、Neil Chiらは、単一細胞解析と空間遺伝子発現データを併用して、発生中のヒト心臓の空間地図を単一細胞レベルの分解能で構築し、広範な心臓細胞亜集団の領域分布を明らかにし、これらの細胞が心臓発生中にどのように相互作用するかを明らかにした。単一細胞解析では、解剖学的位置と発生段階に対応する特徴を示す75の細胞亜集団が特定された。その一例が、心臓弁に位置する新しい細胞サブタイプだ。また、MERFISHという空間イメージング法を用いて単一細胞内の数百から数千の特異的な遺伝子を同時に画像化することによって、個々の細胞の予備的な空間同定が可能になった。そして、これらのデータを単一細胞トランスクリプトミクスと組み合わせることで、完全なトランスクリプトームを予備的な空間地図上にマッピングできた。その結果、これまでにない高分解能を達成し、個々の細胞とそれらが存在する場所を深く理解できるようになった。著者らは、細胞集団の特定の組み合わせの間で相互作用が生じることを発見し、異なる心臓構造の発生を引き起こすシグナル伝達パターンを解明する手掛かりをもたらした。例えば、心室壁の形成に関与している可能性のある心室心筋細胞、線維芽細胞(結合組織の一部)、内皮細胞(血管の内側を覆っている)の間の相互作用が観察された。
著者らは、今回の研究で明らかになった詳細な情報は、先天性心疾患と成人の心疾患の基盤となる機構の理解を深めるために役立つ可能性があり、心臓修復の新たな戦略の指針となる可能性もあると結論付けている。
doi: 10.1038/s41586-024-07171-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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